竜と戯る星 第二話
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産業解説

これは、「オーク」が運営する大農園である。
資源の極端に限られたこの星において、竜と戦うことを義務付けられた兵役層には、
食糧等の支給品は一切与えられていない。
彼等がこの星で使用する多くの物が、外部より持ち込まれた物に由来する。
その中でも、最重要なのが、食糧であり、兵役層に就いた者にとって、食糧の確保が まず最初の課題となる。
一見自然が溢れる様に見えるこの星であるが、実際は、テラフォーミングによって植樹された、
貧弱な土地でも育つ樹木がほとんどであり、土壌は極めて貧弱である。
野生動物も存在せず、当初は、竜を食用としていた時期もあった様であるが、
安定した食糧とは言えない上に、「人間」に似た特徴を多く持つこの種族を食することに
抵抗を感じる者も多かった。
兵役層が農業を始める様になったのは割と初期のことである。
この時代、長期間にわたる宇宙渡航において、宇宙船内に水耕設備を設けるのは常識であり、
よほどの緊急事態でなければ、宇宙渡航において餓死者が出ることは無い
(切迫した状況下で、水耕設備が未完のまま星を脱出し、結果多くの餓死者を出した難民船もあるが)。
設備そのものをこの星に持ち込むことは不可能でも、この星の環境下での水耕技術を整備した上で、
持ち込んだ苗を栽培することによって、この星で飢える者は極端に減少することになった。
だが、それは、竜を退治して点を競うというこの星のゲームの様相を大きく変化させることになる。
すなわち、農地を巡る戦いが始まったのである。
そもそも宇宙船の水耕技術を持ち込むという発想をする者は皆無であり、それを最初にやった者は、
よほど頭脳の優れた者か、この星のことを知っていて、あえてこの星に乗り込もうとした者の
どちらかであることは間違いない。
つまり、この星で農地を持つ陣営は非常に少ない。
その中で、オーク陣営の大農園は極めて巨大であり、この星において羨望の的となった。
オークのリーダーであるラツは、この状況に際し、極めて特殊なスタンスを取った。
それは、二つの選択肢を突き付けることである。
ひとつは、共存し、永住すること。つまり、得点を争うゲームから降りて、この星で一生を終える選択。
もうひとつは、奪い合うこと。つまり、得点ゲームを存続するために、農地をオークから奪うこと。
二つ目の選択肢を選べば、彼等に向けられた無数の砲門に跡形もなく消失させられることとなる。
オークの…ラツのこのスタンスがどう形成されていったかは、今後の物語において明らかになるであろう。


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