◆ 入学式が終わり、クラスメートや担任の顔合わせも終わり、中学生活一日目の終わりが近付いてきた。 私と能岡さんは、学校の探検がてら、中庭の花壇に腰かけ、話していた。 そこで、二人に共通点があることを知った。 「私、家庭の事情で、小学校にはほとんど行かなかったんだ。だけど、家庭教師みたいな人がいてくれたから 小学校の分の勉強は大丈夫」 「へー、私も、家の仕事の関係で、学校に行けない時が多かったな。 だから、学校で友達ができたことなんて無かったんだ」 「私と、同じだね。だけど、お互い、記録の更新は無しってことで」 「だね」 「気になる? 私の家の事情」 「…気にならないって言ったら、多分嘘だな…ごめん」 「いいよ、だけど約束してほしいの。 私の家の事、知らないでいてほしい。 私は、別に知られてもいい。だけど、これを知ったら、あなたが傷つくかもしれない」 「…わかった。じゃあ、私からも、あなたに同じ約束をしてほしい」 「うん。お互い、絶対だよ」 私達は、互いの小指を強く絡みつけ合い、そのまま見つめ合った。 この子の心は読まない。読んではならない。そう強く思った桜の咲く空の下であった。
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