◆ 学校の近くまで来ると、街並みが変わる。 まるで、外国にでも来てしまったかのような感じ。 整然と並んだ家々、石畳の歩道、手入れの行き届いた街路樹、 車道も、スクールゾーン故か、交通量が少なく感じる。 ごちゃっとしたのも好きだけど、こういう雰囲気も悪くはない。 と、その時、この街並みと同様、整然とした雰囲気の背中を見つけた。 私と同じ制服。背中でわかる物静かな佇まい。良家のお嬢さんだろうか? まあ、私も良家と言えば良家らしいので、傍から見ればあんな風に見えるのだろうか? 何となく、うずうずする。声をかけてみようか…? それとなく彼女に近づいてみる。すると、妙な気配でも察知したのだろうか、彼女がこちらを振り向いた。 「!」私を睨みつける様な、鋭い視線。「お、おはよう…はじめまして…」挨拶がぎこちなくなってしまった。 すると、何と、彼女はにっこり笑って「おはよう! あなたも新入生?」と挨拶を返してくれた! いい人だ、と思い、少し悪いが、心の中を読ませてもらおうと思った瞬間、能力を自制してしまった。 彼女が何かをしたわけではなく、他の何かがどうこうした、というわけでもない。 私自身が、彼女の心を見るべきではない、と判断したのだ。 彼女の心の中には見てはいけないものがある。確かに他の人の心だって見ていいものじゃないけど、 そういうのとは違う。これは、私の完全な勘だけど、とにかく、彼女の心の奥を知ってはいけない。 そう感じたのだ。 「どうしたの?」 「あ! えーと… 私、編。宮田編って言います」 「編ちゃん? 私は観里。能岡観里。よろしくね!」 「よろしく!」
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