その声に私は耳を疑った。

「前田…!?」

後ろを振り向くと、そこには前田がいた。

私は、その場にしゃがみこみ、胸を隠す。

「何故、お前が!?」

「ふん、さすがは頂と言ったところか」

「わ、私を試すために…この子を!?」

色んな気持ちで声が上擦る。

「お前を試す気は無いが、お前がこいつを止められるかどうかには興味があった

どうやら、お前は神に愛されている」

「わ、私は頂だ! 神に愛されるのは当然だ!」

「そうだな… お前には、その資格がある」

「…何よ… 私に用があるなら、さっさと…」

私の言葉に耳を傾けず、前田は、彼女の所に歩いていく。

前田が私の前に出ると、私は胸を隠す手を更にきつく締め、破れて脚を露わにした袴の位置を直し、脚を隠した。

そんな私には目もくれず、前田は彼女の胸元に手を当てる。

「彼女に何をする気…?」

前田はしばらく黙って、こちらを向いた。

「彼女の能力は消した。ご苦労だったな」

「!?」

私には、何が何だかわからなかった。

今まで、前田の能力を得た者は、何らかの形で死を迎えていた。

なのに、彼女は…

「お前が考えていることは予想できる… 別に、俺の能力を得た者は必ず死す運命にある、というわけではない。

こいつにとって、この能力を使ってお前に負けた時点で、その能力は無価値なものに帰したのだ。

こいつの欲したものは、万能なる魔法。それが、万能では無く、欠陥のあるものと判ったのだからな」

「あえて、万能な能力を与えていないの? それとも、あなたの能力自体の限界?」

「俺は人だ。神の能力と比べてくれるな」

そう言って前田は笑った。

「さて、今日はユキはいない。あいつには別の仕事を与えたからな。

一対一だが、やるか?」

「…」

神様から与えられた能力… 前田はああは言ってるが、それでも、前田に勝てるのかどうか、私にはわからない。

能力を与えてくれたのが神様でも、それを扱う私は人だ。

「…まあ、お前も、幼いながら女だからな、その格好では集中できんだろう」

「…」

私は、更に腕をきつく締め、うつむく。

「では、また」

「あ…」すれ違い様に、私は前田に何かを言おうとした。だけど、振り返ると、前田はもう、いなかった。

「う… うう…」

彼女の意識が戻った様だ…  

 

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