ともかく、彼女を同じ目線に下ろした。 だが、彼女の能力は侮れない。 好きな場所に霊力を溜め、爆発させることができる。 それ以外にも、前田からいくつかの能力を与えられた様である以上、 なめてかかるのは自殺行為だ。 こちらも、遠慮無い能力行使をさせてもらう。
私の精神の奥底、全ての人間が共有する領域と、私個人の領域の境界にある小さな殻 私は、ここに立ち入ることと、殻を開けることを許された。 殻の中に入ると、そこは、海の上に浮かぶ草原の丘、遠くには丘陵が見え、薄曇りの空は薄紅に染まっている。 そこに、大理石の様な肌を持った、巨大な人間の様な生物がうずくまっていた。 全身は細く、余計な筋肉は無いが、引き締まっている。頭には二本の巨大な、山羊の様な角があり、 全身から、ぼうっとした薄い光を放っている。 「あなたが、私の、鬼さん?」 巨大な体を少し持ち上げ、目を薄く開く。赤く輝く目は、血というよりは炎のそれに近い。 その目に睨まれ、私は動けなくなってしまった。だけど、恐怖は感じない。 むしろ、歓喜が湧いてくる。 「さあ、あなたが、解放される時よ!」 上擦る様に叫ぶ私 立ち上がる巨大な体 殻の中の空が割れる! 音を立て、破片が落ち、私の精神の中の通り道が光輝いて、巨大な白亜の体躯を導く! 私は、全身を駆け抜ける不思議な快感に思わず悶えた。 神依りの時の、神による独りよがりな押し付けの快楽とは違う、正に、今正に私が求めている快感がそこにあった。 白い巨大な体は、途中で足を止める。そうか、まだ、ここまでしか許されていない… だけど、充分。これで充分! さあ、行くよ! 私と巨大な体が一つになる。
現実における私の身体に変化が現れる。 私の全身が光を帯び、頭から角が生えた。 こうして、私は、私の精神の奥底に眠る存在、「鬼」の助力を得ることに成功した。
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