◆ ここ数日、強い霊力が、市内上空を飛びまわっている。 爆発事件の犯人であろう。 特定の位置に留まっているわけでもない相手に、界理結界は使いづらい以上、 かなり、苦戦が強いられるはずだ。神様から与えられた力を使わざるを得ないだろう。 台風の通過予想よろしく、通過地点を予測し、その場所で待つ。 某ビルの屋上、遠くに白い点が見える。来た! 猛スピードで迫ってくるそれは、だんだん、人の姿をしていることがわかってくる。 人が飛んでいる。テレビ等ではよく見る光景だが、実際目にすると、実に異様だ。 向こうはこちらに気付いていない。通り過ぎる前に、こちらに気付かせなければ。 外獅子と内獅子で自己暗示をかけた後、霊力を練る。 一般人には別になんてことないものであるが、この練られた霊力をぶつけられると、 体内の霊力が外にはじき出される。つまり、霊力に頼った術の場合、その術が途切れることを意味する。 下手をすれば、あの人は墜落死だ。だけど、止めるにはこれしか無いだろう。 「当れ!」対象が真上を通過するタイミングを見計らい、刀印を思いっきり突き出す。 と、その瞬間、対象の動きが止まった。 「!」当る直前に、何かを感じて急停止したらしい。何と言う勘の良さ。これも前田の与えた力? 「誰!? 危ないじゃない!」 その言葉に耳を傾けず、私は再び霊力を数発射出する。 彼女は、その霊力を見切り、全てかわす。 ほんの一瞬、彼女を足止めできた、その間に、次の仕込みは完了している。 彼女がその場から逃げだそうとした瞬間、すでに射出してある霊力が、再び彼女に向かって飛んでいく。 それに気付いた彼女は全力で飛び回る。私は、彼女に向けて、射出する霊力を追加していく。 逃げても埒があかないことを悟った彼女は、私に向かって飛んでくる。 それと同時に、私の周囲の霊力が、高密度で集中していくことに気付いた。 「読み通り」 私は、集中した霊力を刀印で切り、それを彼女に向けて撃ち出した。 「!」それを彼女はあっさりかわす。 「うそ!」 何と言う反射速度だ。これも前田が? 何てことを考えているうちに、彼女があっという間に距離を詰め、私の目の前に! 「くっ!」 時速何キロだかわからないが、高スピードで飛び回る物体にぶつかったのだ、吹っ飛ばないわけが無い。 だが、彼女もただではすまない。まあ、お互い割と頑丈に産まれたのが幸いしたのだろうか、 これと言って怪我らしい怪我は無い。 「…や、やあ、はじめまして…」 「ふふん、はじめまして」 鼻で笑ったのか、鼻歌なのか、余裕の笑顔を浮かべ、彼女は挨拶をした。
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