小さな頃から、人が苦手だった。

ううん、最初は、人懐っこい子供だったって親は言ってた。

だけど、幼稚園で、園児同士のトラブルに巻き込まれたり、巻き込んだり、そういうのが多くなって、

同じ年の子が恐くなり、それから年が経つにつれて、それ以外の人達も恐くなって…

だけど、人と付き合わなきゃ生きていけないのが人間だから、人並みに友達も作ったし、

笑顔で話すことだって苦ではない。

だけど、私の中の恐怖は消えなかった。

きっかけは、小学校3年の時、友達との何気ない会話の中でポロっと出た「魔法が使えたらなあ」

そんな言葉に、友達が、ちょっと驚いて、「何言ってるの?」って返したこと。

その時はそれだけだったんだけど、あの時、人を遠ざける方法を知った。

多分、私にとって初めての「魔法」

それから、だんだん、私は人前で平気で変なことを言う様になった。

おかしな口癖、どんな場所でも鼻歌を歌う癖、私の周りから、人がどんどん遠ざかっていく。

それでも、私と友達でいたいという変わり者、その人達を私は「真の友」と呼んだ。

「真の友」と共に話す、不思議で、奇妙で、変な事柄、

宇宙人、小人、妖精、お化け、神様、悪魔、そんな人達が織りなす世界の形を、皆で勝手に話し合った。

この人達なら恐くない、だから私はその人達の前で、思いっきり変な自分を発揮した。

そうだ、これが本当の私なんだ、と、本気で思っていたのか、言い聞かせていたのか…

そして、今、私は、本当の魔法を手に入れた。

たまたま覗いた中学校で、ひどいいじめがあったのを見た。

悪い奴は許さない。皆が幸せになるために!

そして、学校は見事、大爆発。だけど、力の調整が難しくって、誰かれ構わずふっとばしちゃった。

仕方ない、正義を為すのに犠牲は必要ってどっかで聞いたことがある。

さあ、悪い奴はいないかな? 困ってる人はいないかな?

あ! あそこにいるのは友達だ。そう、「真の友」!

おーい!

二人とも後ろを振り返った。まあ、当たり前だよね、私が空を飛んでるなんて思いもよらないだろうな。

「上だよー! 上ー!」

二人が私の方を見た!

「おーい! 気付いたー?」

私が呼びかける。

だけど、二人とも返事をしない。

びっくりしちゃってるなあ、仕方ない、降りて話そう。

地面に降り立つ私を見て、二人は半歩下がった。

あー…

まあ、そうだよね…

皆であんな話はしてたけど、別に本気でそういうこと言ってたわけでもないし…

ただただ、夢物語が楽しかっただけなんだよね…

「えーっと、びっくり、させちゃった…かな…?

はは、ごめんね… ちょっと、こんなことができるようになっちゃって…

まあ、その…

さよならっ!」

私は飛び立った。

小さい時から大事にしていたおもちゃがついに壊れて、親に「捨てなさい」と言われた時

そんな時に感じていたのと似たような感じ。

だけど、何かすがすがしかった。

「ふーん、ふん、ふん」何故だろう

「ふんふん、ふーん、ふん」もう、自分を偽る必要も無くなったのに

「ふーん、ふん、ふーん、ららら、らら」何故、鼻歌が出てくるの…?

「ららら、らら、らららーらーらー」こんなにも笑顔いっぱいで…

「あーあ゛ーあ゛ー、あああー、あ゛ーあ゛ー」なのに、こんなに涙があふれて…

「らーららーらーらーあーあああーらーらーらーらー!!!!!」  

 

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