◆ 小さな頃から、人が苦手だった。 ううん、最初は、人懐っこい子供だったって親は言ってた。 だけど、幼稚園で、園児同士のトラブルに巻き込まれたり、巻き込んだり、そういうのが多くなって、 同じ年の子が恐くなり、それから年が経つにつれて、それ以外の人達も恐くなって… だけど、人と付き合わなきゃ生きていけないのが人間だから、人並みに友達も作ったし、 笑顔で話すことだって苦ではない。 だけど、私の中の恐怖は消えなかった。 きっかけは、小学校3年の時、友達との何気ない会話の中でポロっと出た「魔法が使えたらなあ」 そんな言葉に、友達が、ちょっと驚いて、「何言ってるの?」って返したこと。 その時はそれだけだったんだけど、あの時、人を遠ざける方法を知った。 多分、私にとって初めての「魔法」 それから、だんだん、私は人前で平気で変なことを言う様になった。 おかしな口癖、どんな場所でも鼻歌を歌う癖、私の周りから、人がどんどん遠ざかっていく。 それでも、私と友達でいたいという変わり者、その人達を私は「真の友」と呼んだ。 「真の友」と共に話す、不思議で、奇妙で、変な事柄、 宇宙人、小人、妖精、お化け、神様、悪魔、そんな人達が織りなす世界の形を、皆で勝手に話し合った。 この人達なら恐くない、だから私はその人達の前で、思いっきり変な自分を発揮した。 そうだ、これが本当の私なんだ、と、本気で思っていたのか、言い聞かせていたのか… そして、今、私は、本当の魔法を手に入れた。 たまたま覗いた中学校で、ひどいいじめがあったのを見た。 悪い奴は許さない。皆が幸せになるために! そして、学校は見事、大爆発。だけど、力の調整が難しくって、誰かれ構わずふっとばしちゃった。 仕方ない、正義を為すのに犠牲は必要ってどっかで聞いたことがある。 さあ、悪い奴はいないかな? 困ってる人はいないかな? あ! あそこにいるのは友達だ。そう、「真の友」! おーい! 二人とも後ろを振り返った。まあ、当たり前だよね、私が空を飛んでるなんて思いもよらないだろうな。 「上だよー! 上ー!」 二人が私の方を見た! 「おーい! 気付いたー?」 私が呼びかける。 … だけど、二人とも返事をしない。 びっくりしちゃってるなあ、仕方ない、降りて話そう。 地面に降り立つ私を見て、二人は半歩下がった。 … あー… まあ、そうだよね… 皆であんな話はしてたけど、別に本気でそういうこと言ってたわけでもないし… ただただ、夢物語が楽しかっただけなんだよね… 「えーっと、びっくり、させちゃった…かな…? はは、ごめんね… ちょっと、こんなことができるようになっちゃって… まあ、その… さよならっ!」 私は飛び立った。 小さい時から大事にしていたおもちゃがついに壊れて、親に「捨てなさい」と言われた時 そんな時に感じていたのと似たような感じ。 だけど、何かすがすがしかった。 「ふーん、ふん、ふん」何故だろう 「ふんふん、ふーん、ふん」もう、自分を偽る必要も無くなったのに 「ふーん、ふん、ふーん、ららら、らら」何故、鼻歌が出てくるの…? 「ららら、らら、らららーらーらー」こんなにも笑顔いっぱいで… 「あーあ゛ーあ゛ー、あああー、あ゛ーあ゛ー」なのに、こんなに涙があふれて… 「らーららーらーらーあーあああーらーらーらーらー!!!!!」
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