◆ 「ふんふん、らんらん、ら〜らんらん…」 随分と楽しそうに、鼻歌混じりで、下校する少女がいる。 私の目には、とても何かに焦っている様には見えない。 だけど、堂座が言うんだから、間違い無い。 だけど、同じくらいの年齢の子は、ちょっと自信が無い。 まあ、がんばってみるか、堂座のためだもん。 「ねえ」 「ふんふん…ふ〜ん?」 鼻歌で答える様に振り向く彼女は、実にあっけらかんとしている。 「ふんふんふん? どちらさん?」 「…こ、こんにちは…」自分でも口がひきつりながら喋っているのがよくわかる。 「こんにちは、初めまして、ふんふんふん」 妙にリズム感の良い挨拶が、余計にこちらの調子を狂わせる。 だけど、相手のリズムに同調して、接触するのが、「白」たる私の真骨頂だ。 ここで、負けるわけには… 「はじめまして、ご機嫌いかが?」 「はいっ! とってもご機嫌です!」 ものすごく屈託の無い笑顔だ。本当に輝いて見えるから困る。 「あの〜… 何か、やってみたいこととかって、あります?」 「はいっ! 私の魔法が、皆を幸せにします!」 …!? … … ??? !?!? 何? 今、この子、何て言った? 「あの… 魔法使いさん?」 「いいえ! だけど、大人になったらなるんです!」 はあ、そうですか、がんばって… …て、そういうことね… 「早く大人になりたい?」 「大人になって、魔法を使って、皆が幸せになるんです!」 願望というよりは、そういう既成事実が、この子の頭の中ではできあがっている様で… 「堂座ー…」 堂座を呼ぶ声に何だか力が入らない…
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