再び、快楽の渦へ。

今まで、どれほど、この渦に飛び込んできたのか…

思い出す気にもなれない。

だけど、今ほど、自分にとって必要だと思える神依りも無かっただろう。

体を通り過ぎる快楽の塊など、もはや、快とも不快とも思わず、気にも留めないうちに通り過ぎていく。

「やあ、また会えたね」

「あなたにもらった力など、使ってはいないんだから、因果は狂ってないでしょ?」

「一本取られたな。だけど、待っていたことは確かだよ。わかっていても、君が来るのは待ち遠しい」

「あんたじゃなけりゃ、素敵なセリフなんだけどね」

「ふふ。さあ、余計なことなど忘れて、私と楽しもう」

「ふざけんな、下手に出りゃ調子に乗って…」

「はは、冗談だよ。きみはかわいいから、からかいたくなる」

「…っざけんなってんだろ!」

私を覆う光の束が、赤黒い血の渦になる。

「!?」私は、一瞬、なんだかわからなくなる。

血の渦が、再び光になる。

「それが、君に与えた力さ。今のは、君の中の鬼が発現したんだね。

鬼は、強い怒りや、感動など、直接心に訴える感情によって呼び覚まされる。

だけど、それは、彼等を完全に覚醒させるにはあまりに弱い力さ。

そこで、私の与えた力が、彼等に、さらに進んだ覚醒を与えるんだ」

「で、この力が何の役に立ったっての?

何の力も発揮すること無く、彼女の死をむざむざ見送った!

私に何ができたっていうの!?」

「君は、私に答えを求めに来たのかい?

前田は言っていたろう? 私に答えを求めてはならない、と

まあ、ここまではっきりした物言いではないだろうがね、彼の場合」

「あいつを…知っているの?」

「ふふ…まあ、それはいいじゃないか

君は、別に私から何かを聞き出したくて来たわけじゃない。

力を返しに来たわけでもない」

「ええ、私は、あなたの力により、鬼とたたら、ふたつの力を解放できる。

つまり、私は、あなたと同等の力を持っている。それも二つ」

「くっくっく…」

「私は、世界を変える力を持っていると言ってもいい」

「そうだね、鬼とたたらは、君の世界を創世したのだからね」

「聞くけど…この力を私に託したということは…この力でこの世界がどうなろうと

あなたは関知しない、ということ?」

「そうだよ?それが?」

「あきれた…まあ、あんたが、この世界の一切に責任を持つつもりも無いことは承知してたけど」

「私のことをよく理解していてくれて何よりだ」

「だけど、他の依り代ならば、与えてくれた?」

「いや、それは無いな。はっきり言って、他の依り代では、面白くなさそうだ」

「…そういうことか」

「そういうことだよ、つまりそれが、『頂』ということだ。

君が世界の支配権を握る巫女なのだ」

「ありがとう、何だか、初めて、あなたに聞きたいことが聞けた気がする。

いいよ、今日は、好きにして。

本来なら、重荷を背負わされた気分にならなきゃいけないところだけど、

何か、逆に、重いものが取れた様な気分」

「そう、その通りだ、君には全てが許される。

何をするにしても、目的の設定から、その方法論に至るまで、全てが君の自由なのだ。

この力を得たその瞬間から、この世界は、君の自由になったのだ」

「…」

「さあ、始めるよ」  

 

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