頂-ただひとり-の編-あみ- 第七話 ◆ 私は、何も持っていない 空を飛ぶ羽根も 困難を貫く剣も 世界を変える、勇気も力も 誰かを信じ、愛し貫く意志も… 私は、常に、私に接触する誰かを傷つけ続けている。 何も持たない私に、関わる意味なんて無い、ってことをわからせるためだ。 同時に、身を守る術を持たない私が、気安く誰かを受け入れるなんてあり得ないことだ。 こんな生き方で、私は別に不自由をしたことも無いし、 だからと言って、得したことも無い。 … 私は、この世に、いてもいなくてもいい人間なのかもしれない。 そういう考えに行きつく度に、死への衝動と、生への執着に、私は挟まれ、精神をすり潰す。 その度に、私は、だるそうな顔をぶら下げて、街を歩く。 その様は、ボケ老人の徘徊だ。ふらふらと、当て所無く、目は前を向いてるが、上も下も横も後ろも前も見ず、 車が横をかすめても、気にもせず、たまに、「どこ見てるんだ」って怒る人もいるけど 頭少し下げて「ごめんなさい…」と呟けば去っていくから、やはり気にしない。 人が何かをするために生れてきたのなら、私は何のために生まれてきたというの? こんな風になってる私に何も文句は無いの? そして、イライラが頭の中を支配しだす。そうなると、このまま出歩いていても、トラブルになるだけだから イライラが悪化する前に家に帰る。 それが、私の一日のサイクルだった。
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