◆ 旅立ちの朝 黒いワンピースは、親しき者への弔いの色 幼き顔立ちに差しこむ凛々しさは、何ゆえか 朝日の照らす頬のつやに、初夏の水滴がそっと弾け、 黒き光沢の優しき生地に、空往く雲さえも映り込む様。 決意の旅に荷物はいらぬ。 身軽な装いに、だが釣り合わぬ、重たき一歩 少女は、ただただ、踏みしめる。 朝露に濡れたアスファルトに、確かに跡をつけていく。 時も経たぬうちに消えていくその跡を、追って後からついてくる、 跳ねる黒影ただ一つ 「おいで、クァ助」 カラス一鳴き、肩にとまり、横目で少女の顔を見上げる。 朝日に輝く鋭き眼光。 これが、あの死にたがりの少女の目か? いやいや、あの日は捨て去った。 少女は、進む、ただ進む。 己の信じる一歩のみ、頼るはただただ、己の脚のみ。 輝く薄い青の空は、やがて、覆われる雲のうろこ 訪れるは雨の気配。 傘も持たず、少女は往く。
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