目の前に現れた前田の背後に、白い服を着た少女が見えた。

「し…白…」恐怖のあまり、動けないはずの「赤」がつぶやいた。

あれが「白」… やはり、前田と…

でも、そんなことは、どうでもいい…

前田が目の前にいる… ちえ姉さんを殺した、前田が…

私の足はもう、限界に近い。その足で、立つ。

内獅子の印を作り、つぶやく

「我が、内なる獅子よ…眼前の敵に打ち勝つために、今一度、力を…」

「お前の疲労は、自己暗示でどうこうなるレベルのものではないだろう、依り代の娘よ」

「うるさい! 貴様が、ちえ姉さんを…」

私は、ありったけの力を込めて走った。だが、前田に届く前に、私の手は地についた。

と、その時、ジャンパーの人が叫んだ。

「どういうことだよ!? 何で、あんたが、恨まれてる?

ちえ姉さんって何だよ? あんた、この子に恨まれる様な、何をしたってんだ!?」

「ふん、小僧が… 正義を行うためには、犠牲が必要だと教えなかったか?」

「その犠牲は、英雄自らが買って出るもんじゃねえのかよ!?」

「…興ざめだ…頂に出会えたというのに、その頂ですら、この体たらく…

つまらん時代になったな…」

そう言って、前田は去っていく… 行くな… 行くな… 「いくなぁ…!!」

全身を振り絞った叫びも、前田の背中には届かなかった。

「ユキ」と呼ばれた少女…「白」だけが、可憐な笑顔を向けて、前田について行き、

そして、二人とも、夕闇とネオンの渦に消えていった…

「前田あぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

ジャンパーの人が大声をあげて、前田を追って行った…待って… そいつは…

遠ざかる意識の中、黒い影が空から舞い降りて、私を包み込むのを感じた…

何て気持ちいい…このまま死んでしまいそう…  

 

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