◆ 私が神様から受け取ったのは、殺意を感じる力。 この街くらいの大きさの場所だったら、充分カバーできる。 もし、その中で、殺意を抱く者があれば、その位置は大体特定できる。 とは言え、多かれ少なかれ、誰かしら、何らかの殺意は抱いているもので、 情報の渦が一度に私の頭に入り込み、軽く混乱する。 でも、これも感覚の一つである以上、落ち着けば、情報の取捨選択が行われ、 次第に、大きな一つの地点が特定された。 その点は、歩く速度で移動しているが、一定区域を出る様子は無い。 とりあえず、そこに向かってみたい。 「お体は大丈夫で?」 おばあが、私の体を気遣う。神依りを終えたばかりで、体を洗い、休憩を少し取っただけなのだ。 普通に考えれば、身が持たない。 例えるなら、セックス、というか、凌辱の限りを尽くされた女性が、その体で、ろくに休憩も与えられず フルマラソンに出場できるか、っていう話。まあ、無理なんだけど… だけど、この殺意の点が、いつまでも同じところにありつづけるという保証は無い。 一応、この点の持ち主の顔ぐらいは確認しておきたい、と思い、半ば強引に、 おばあの制止を振り切り、街に出た。 フラフラになりながら、スポーツドリンクだけを頼りに、目的の場所に辿り着くと、 そこにいたのは… 「『赤』…」 朦朧とした頭が、思わず口を動かす。 「赤」が振り向き、ニヤリと笑った。 「あっれー、いいとこで会ったじゃん。 しかも何? 何かフラフラだけど大丈夫?」 「あなた、組織に帰ったんじゃ…」 「あのさあ、私が組織に手ぶらで帰れると思う?」 この間、私が読んだ思考では、日本総地産連合結社のヒットマンの一部が、独断で、 「白」を抹殺するために、この街を洗いざらい調べているらしいが、 そのうちの一人が、彼女だ。 組織内の失態を外部に漏らすことになった、先日の依頼者達を抹殺しようとしたのも、 私と結果的に戦うことになったのも、全部彼女の独断、しかも、失敗した。 当然、それなりの手土産を持ち帰らなければ、彼女が粛清対象になるのは間違い無い。 そして、どうしようかわからず、当ても無く、かつ組織に見つからない様に彷徨っている時に 彼女を見つけたのだ。フラフラの私が…
|
|
ブラウザを閉じてください |