私が神様から受け取ったのは、殺意を感じる力。

この街くらいの大きさの場所だったら、充分カバーできる。

もし、その中で、殺意を抱く者があれば、その位置は大体特定できる。

とは言え、多かれ少なかれ、誰かしら、何らかの殺意は抱いているもので、

情報の渦が一度に私の頭に入り込み、軽く混乱する。

でも、これも感覚の一つである以上、落ち着けば、情報の取捨選択が行われ、

次第に、大きな一つの地点が特定された。

その点は、歩く速度で移動しているが、一定区域を出る様子は無い。

とりあえず、そこに向かってみたい。

「お体は大丈夫で?」

おばあが、私の体を気遣う。神依りを終えたばかりで、体を洗い、休憩を少し取っただけなのだ。

普通に考えれば、身が持たない。

例えるなら、セックス、というか、凌辱の限りを尽くされた女性が、その体で、ろくに休憩も与えられず

フルマラソンに出場できるか、っていう話。まあ、無理なんだけど…

だけど、この殺意の点が、いつまでも同じところにありつづけるという保証は無い。

一応、この点の持ち主の顔ぐらいは確認しておきたい、と思い、半ば強引に、

おばあの制止を振り切り、街に出た。

フラフラになりながら、スポーツドリンクだけを頼りに、目的の場所に辿り着くと、

そこにいたのは…

「『赤』…」

朦朧とした頭が、思わず口を動かす。

「赤」が振り向き、ニヤリと笑った。

「あっれー、いいとこで会ったじゃん。

しかも何? 何かフラフラだけど大丈夫?」

「あなた、組織に帰ったんじゃ…」

「あのさあ、私が組織に手ぶらで帰れると思う?」

この間、私が読んだ思考では、日本総地産連合結社のヒットマンの一部が、独断で、

「白」を抹殺するために、この街を洗いざらい調べているらしいが、

そのうちの一人が、彼女だ。

組織内の失態を外部に漏らすことになった、先日の依頼者達を抹殺しようとしたのも、

私と結果的に戦うことになったのも、全部彼女の独断、しかも、失敗した。

当然、それなりの手土産を持ち帰らなければ、彼女が粛清対象になるのは間違い無い。

そして、どうしようかわからず、当ても無く、かつ組織に見つからない様に彷徨っている時に

彼女を見つけたのだ。フラフラの私が…  

 

4_____6

   

 

 

ブラウザを閉じてください