ピンポーン

呼び出しのチャイムがあった。

「お客さんかな? 予定あったっけ」

「いいえ、ですが、緊急な用事ということもありましょう」

おばあが対応しに行った。

「お客?」東子さんが顔を出す。

「おばあが行ったよ」

「そう…」訝しげな顔をする東子さん。

「気になることでもある?」

「いや、昨日の今日だから、変な客ってこともあり得るし、気をつけた方がいいかなって」

考えすぎとも言えない。何せ、専属の殺し屋を雇っているどころか、組織内で作り上げているらしい、

そういう連中だ。

そういう連中の傘下に私達もいるっていうのが、変な気持ちだ。

「お嬢様、お連れしました」

客間へ急ぐと、そこには、女性とも男性ともつかない、綺麗な顔をした人がいた。

パンツルックのスタイルは、キャリアウーマン風ともとれなくもない。

だけど、何か独特な、冷たい刃みたいな雰囲気が感じられる…

その人が私に目を向けた瞬間、私はとっさにその人の考えを読んだ…!!

この人…!

だけど、私は平静を装う。「お越しくださり、ありがとうございます。ご用件は何でしょう?」

「日本総地産連合結社の者です。先日、うちの者がこちらに参りましたでしょう?

ちょっと、確認のため、どんな話をしたのかなあ…と…」

さっき考えを読んだ時はそこまで気がまわらなかったが、声の感じからして、女の人みたいだ。

「そういったお話は、そちらの方でお聞きになっていただいてもよろしいのでは?」

わざと、けんか腰気味に返してみる。

「やれやれ…あんたら、『白』ってあいつらから聞かなかったか?」

その人も急に口調を変えて、私達に迫る。

「さて、何のことでしょう?」

「すっとぼけても無駄だよ、あいつらはちゃんと吐いたからね、あんたらに事態を説明したってこと」

さっき読んだ考えを、割と素直に喋ってくれた。

さて…

「ところで、『赤』って何です?」

「!! どこでそれを…? あいつらが…? いや、それは無いな…」

「私から見たら、あなたって、青っぽいイメージですけどね」

その人を、マジマジと見つめながら言ってみた。

「あんた、依り代とか言ったっけ? 何?テレパシーか何かも使えるの? そういう人って…」

「まあ、似たようなものですが」

すると、その人は、急に怒り顔になったかと思ったら、急に無表情になった。

無表情な顔を見たことはあるけど、ここまで人は無表情になれるのかと思ってしまうくらい

無表情だった。

すると、その人からは、たちまち、ごく単純な情報しか読めなくなった。

それも、言葉でなく、完全なイメージ。

そこには、私達が殺された姿があった。でも、そこまでの過程を示す考えがどこにも無い。

そうこうしてるうちに、彼女は一瞬で姿をくらますと、次の瞬間、私の背後から襲ってきた。

とっさに身をかわす。一体今のは…!?

動物的本能とでも言うつもり? 動物の本能ってのは、意外と理性的で、

野蛮で獰猛に見える肉食動物の狩りも、割と冷静な計算のもとで行われる。

計算が乏しいのは、サメまで遡ったぐらいかな?

とにかく今の彼女の動きは、明らかにおかしい。本当に、サメの様に、無計算で私を狙ってきた。

「お嬢様! 呆けている場合ではない!」

おばあの声が響く、私は、一瞬感じた殺気の方に目をやると、ナイフを握った手が襲ってきた!

とっさにかわすが、ナイフが私の胸をかすめる。  

 

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