服を着て、急いで客室に向かうと、もうお客様が来ていた。

「やば…」

とにかく、平静さを装って、あいさつをする。

「ん?あれ?」

心を読むまでも無く、私はその人に何かを感じた。

サラサラした髪は肩より長く、眼鏡の向こうには切れ長な目、

清潔なシャツに、スーツっぽいジーンズ、

かっこいいんだけど、どこか優しげな印象、この人には会ったことがある…

心を読まずに当ててみよう。

「もしかして…東子さん…?」

「あったりー!相変わらず鋭いね!」

東子さん、本名、高見東子は、代々、宮田家を支え続けている高見家の分家の長女。

だけど、分家だから、あまり宮田家には関わっていない。

実は、ちえ姉さんが、高見家本家の長女で、東子さんは、そのおばさんにあたる。

「わあー、なつかしいー!いつ日本に?」

「うん…実は、向こうで仕事やってたんだけど…ちえが…あんなことになっちゃったからね…

急いで戻ってきたんだ…だけど、宮田家に足運ぶのが遅れちゃったね…ごめん…」

「いいって…会えただけで嬉しいよ…」

「実は…」東子さんは静かに切り出す。

「しばらく、ここにお世話になることになった。」

「え?それって?」

「実は、向こうで、心療内科の手伝いみたいな仕事してて、

学校でもそんな勉強してたし、お役にたてるかなーって」

「東子様は、宮田家専属のカウンセラーとなることを所望しておられます。」

私はびっくりした。そりゃ、嬉しい。東子さんがうちに来てくれるなんて。

だけど、一つ、疑問がある。

「嬉しい…けど…でも、東子さんって…」

「あはっ、そうだよね。私って、非科学的なこととか信じてないからね。だけどさ…」

「ちえ姉さんのことで…?」

心を読まずともピーンときた。

「うん…変な言い方するけど、ここって、結構、警察とか、政府とか、 ヤクザとか、他にも怪しげな連中が集まってくるじゃない、

もしかしたら、ちえの死に関する情報が得られる一番の近道なんじゃないかなって…」

本人は気付いてるかどうか知らないけど、東子さんはかなり勘が鋭い、下手をすれば、私より。

「つまり、東子さんも、ちえ姉さんの自殺には裏があると…?」

「裏っていうか…こっち来て調べてみたら、あの子、死ぬ前に変な人に会ってたみたいなんだ…」

「変な人!?」この間の事件のことを思い出した。

人に能力を与える力を持つ存在の可能性…関係あるかも…!

「あの子の日記に書いてあったんだけど…前田っていう人、知らない?」

「前田…よくある苗字だし、学校にもいるけど…」

「『前田のおじさん』って書いてあったから、それなりの年齢だと思うんだけど…」

「うーん…お客さんでも、前田って人はいるにはいたけど…接点無さそうだなあ…」

「そっかー…気の長い捜索になりそうだなあ…あんたも、結構調べてくれてるんだ?」

「うん…お世話になったからね…」

「ありがと、あの子、喜ぶよ」

「そんなぁ…」私ははにかみながら笑った。

…「前田」という名前…大きな手掛かりが手に入った。

ちえ姉さん…、きっと、真実をつきとめてみせるから!  

 

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