◆ 「昨日は、お目に掛れず、申し訳ございませんでした。 当家、依り代の、編と申します」 二人の男の顔がもやついた。 まあ、大体何を考えているのかはわかるが、心を読んでみると、 思った通りである。 「私の様な子供が依り代で驚きの様で」 「いえ、滅相も無い。ですが、見たところ…」 「はい、学校に関しては、学業に支障を来さぬことを条件に、場合によっては休学も許可されています」 質問の終わらぬうちに繰り出される私の受け答えに、只ならぬものを感じた二人は、押し黙ってしまった。 「本日の報道を見まして、昨日、私が直接話を聞いていれば、と思いましたが、 何故、全ての情報を下さらなかったのです?」 「実は…」 「まあ、わかりますよ、心の底では、私達のことを信じられないのでしょう」 「…ええ、確かに、信じきることなどできません、こんな不可思議なことなど…」 堂々と言い切られれば、逆に気持ちいい。 「無理に信じろとは申しません。むしろ、お互い、足りない部分を補い合えるならば、素晴らしいことでしょう」 二人はまた押し黙る。まあ、私にとっては殊更珍しいやり取りではない。 顧客の全てが、神依りを本気で信じているわけではないのだ。 正直言って、下手に信じられるよりは、多少疑いの念を持っていてくれた方がやり易い。 神様の言葉は、いつも的を得ているのか得ていないのか、判断に迷う。 解釈如何では、何とでも言えてしまうものなのだ。 それを、当たり障りの無い言葉に直して伝えても、それに何の意味があるのか、私にだってわからない。 そんな言葉を真に受けてくれたって、困る。 「ところで、編さん、昨日の儀式で、何かわかったことは…?」 「…『焦る者達』という言葉に聞き覚えは?」 「焦る者達ですか… わかりませんね。」 質問をしながら、この人達の心も読んでいたのだが、確かに聞き覚えは無いらしい。 「わかりました…では、神依りではない別の方法を試してみましょう。」 「そんな方法がおありで?」 「はい、ところで、ご協力願えますか?」 「ええ、犯人を見つけることができるのならば…」 未だ半信半疑な言葉を尻目に、私は出かける支度を始めた。
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