◆ 早咲きの桜の舞う川沿いの歩道。 ここら辺では、卒業通りと呼ばれている。 そして、この日、晴れて、私達は高校を卒業した。 「やれやれ、この制服ともおさらばか」 「6年間も着てたんだなあ。寂しいね」 「そうか、お前等、中学からだっけ」 「へへー、中学から着てたんだぞ!」 「ちょっと、見てみたかったな…」 「うちに寄ってく? 中学の卒業写真見せてあげようか」 「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」 「ユキも、すっごい可愛いんだよ。今でも可愛いけど、ロリ好きな丸子君にはたまらないものがあるよ」 「待て、別にロリ好きじゃねえし」 「どーだか。ん? ユキ、どうしたの?」 ユキが妙に余所余所しい顔をしているのが気になった。 相変わらずこの子の心は読みにくい。あえて読んでいないけど。 「私は、お邪魔かな?ってね」 自分の顔が赤くなるのが自分でもわかる。丸子君も赤くなっている。 「べ、別に、今日はそういうことは…」 「そういうことって、どういうことなのかなあ?」 「なんで、そういう意地悪なこと聞いてくるかな?」 「いいなあ、私も、彼氏が欲しいなあ」 「前田のこと忘れられないんじゃないの?」 「堂座なら、きっと、『俺のことにいつまでも未練を持っているんじゃない』って言うもん…」 前田の真似をしておどけながらも、寂しさが紛れ込んだ口調だ。 私が殺した事実。それをお互い共有しながらも、ユキは、私を責めない。 そして、私はユキに、どこかで負い目を感じている。 「…」 「編、そんな顔、似合わないよ」 「…ごめん」 「何、謝っちゃってるのさあ! ほら、あそこ寄ってこ!」 ユキは、和菓子屋を指さす。 「もう、しょうがないなあ… また、私におごらせるんでしょ?」 すると、丸子君が 「いつも、お前ばっかに出させるわけにはいかねえよ」 「お、珍しい。じゃあ、何にしようかなあ?」 「お手柔らかに…」 「じゃあ、私はねえ…」 「俺の財布には限度ってものが…」 「じゃあ、えーっと」 「ひええ…」
そんな感じで、馬鹿なことをやりながら、私達は共に歩んで行く。 世界を救うという誓い、そして、友情が、私達を強く結び付けて、 大きく羽ばたいていく。 これから先も、色々なことがあるわけだが、とりあえず、私の話はこれで終わり。 かつての死にたがりの少女は、今、希望を胸に、誰よりも強い生命を手に、 新たな世界に向かおうとしている。
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