目が覚めると、私は、繁華街の道路の上にいた。

そして、何も身に着けていないことに気がついた。

周囲には、やはり、全裸で寝っ転がる人達がいる。

近所の見知った人や、知らない人。

全裸なのに、何故か、恥ずかしさは感じない。

皆、抱き合ったり、口づけをしたり、精神を融合させたりした間柄なのだ。

今更、全裸であることなど、どうでもいい事実に思えてきた。

私のすぐ横に、丸子君と、ユキもいる。

やはり、全裸だ。

まだ呑気に寝ている二人の顔をなでると、二人とも気持のよさそうな顔をした。

東の空が赤く輝いている。

夜明けだ。人類の夜明けだ。

太陽の光が差し込むと、私は立ち上がった。

日の出に気付いた人達も立ちあがる。

そして、全身に日の光を浴びる。

そして、私達は、互いの顔を見合わせて微笑み合う。

全く知らない人でも、全てを知り合う人間同士。

ここにきて、やっと、全ての人が分かり合う、という、人類の悲願が達成された。

いずれ、人類の滅亡という大きな代償を払うことになるが、

それに値する大きな価値を持った一夜だったのだ。

いつ滅んでも悔いはない。

この体験を共有できない、この後の世代はどう思うかわからないが…

「宮田」

丸子君が、起きた様だ。

「おはよう、きれいな日の出だよ」

「ああ」

そして、ユキも起き上がる。

「お二人さん、おはよ、昨夜は激しかったね」

「あんたも一緒だったでしょうが。ていうか、全人類そうだったんだし」

「それにしても変なの」

「何が?」

「三人並んで、裸で日の出見るなんてね」

「冷静に考えたらとんでもないよね…」

「でも、周りだって裸なんだし。

 ま、いつまでもこんな格好してるわけにもいかないし、帰ろうよ」

「だね」

「ていうか、俺達、どこで服脱いだんだ?

 帰ったら、俺の服が無いってことはないよな?」

「編に選んでもらったあの服、無くなってたらやだな」

「まあ、細かいことはいいじゃん、今日くらい」

「そうだね」

朝の太陽に向かって、裸の私達は歩き出す。

鬼は、永遠の眠りに入った。だが、私達の裸の心の美しさを知らしめたことは事実だ。

私達は、この裸の心を誇っていい。

どんな綺麗な服を、これから着るとしても、その奥に眠る、美しい裸の自分自身を忘れることはない。

歩いていこう。それが、蝋の羽を溶かす太陽だとしても。

私達は、滅びを恐れない。それすらも、愛し、慈しもう。

私は、私達は、人類を、この世界を、全てを愛している。  

 

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