◆ 目が覚めると、私は、繁華街の道路の上にいた。 そして、何も身に着けていないことに気がついた。 周囲には、やはり、全裸で寝っ転がる人達がいる。 近所の見知った人や、知らない人。 全裸なのに、何故か、恥ずかしさは感じない。 皆、抱き合ったり、口づけをしたり、精神を融合させたりした間柄なのだ。 今更、全裸であることなど、どうでもいい事実に思えてきた。 私のすぐ横に、丸子君と、ユキもいる。 やはり、全裸だ。 まだ呑気に寝ている二人の顔をなでると、二人とも気持のよさそうな顔をした。 東の空が赤く輝いている。 夜明けだ。人類の夜明けだ。 太陽の光が差し込むと、私は立ち上がった。 日の出に気付いた人達も立ちあがる。 そして、全身に日の光を浴びる。 そして、私達は、互いの顔を見合わせて微笑み合う。 全く知らない人でも、全てを知り合う人間同士。 ここにきて、やっと、全ての人が分かり合う、という、人類の悲願が達成された。 いずれ、人類の滅亡という大きな代償を払うことになるが、 それに値する大きな価値を持った一夜だったのだ。 いつ滅んでも悔いはない。 この体験を共有できない、この後の世代はどう思うかわからないが… 「宮田」 丸子君が、起きた様だ。 「おはよう、きれいな日の出だよ」 「ああ」 そして、ユキも起き上がる。 「お二人さん、おはよ、昨夜は激しかったね」 「あんたも一緒だったでしょうが。ていうか、全人類そうだったんだし」 「それにしても変なの」 「何が?」 「三人並んで、裸で日の出見るなんてね」 「冷静に考えたらとんでもないよね…」 「でも、周りだって裸なんだし。 ま、いつまでもこんな格好してるわけにもいかないし、帰ろうよ」 「だね」 「ていうか、俺達、どこで服脱いだんだ? 帰ったら、俺の服が無いってことはないよな?」 「編に選んでもらったあの服、無くなってたらやだな」 「まあ、細かいことはいいじゃん、今日くらい」 「そうだね」 朝の太陽に向かって、裸の私達は歩き出す。 鬼は、永遠の眠りに入った。だが、私達の裸の心の美しさを知らしめたことは事実だ。 私達は、この裸の心を誇っていい。 どんな綺麗な服を、これから着るとしても、その奥に眠る、美しい裸の自分自身を忘れることはない。 歩いていこう。それが、蝋の羽を溶かす太陽だとしても。 私達は、滅びを恐れない。それすらも、愛し、慈しもう。 私は、私達は、人類を、この世界を、全てを愛している。
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