◆ すると、突然、周囲を炎が取り囲んだ。 「この様な幻影の炎で何をするつもりだ?」 「幻影に見えるのか?」 よく見てみれば、それは、幻影などではなく、 一人の少年が生み出す、イデア変換による高温エネルギー体である。 ここは精神世界であるがゆえに、物質界よりも、イデア変換の影響が生じやすいことは確かである。 だが、ただの人間にここまでの力が発揮されるとは思ってもみなかった。 「丸子佐丸、貴様は確かに、イデア能力者であるが、そこまでの力は無かったはず」 「なら、こいつはどうだ?」 そう言って丸子は、右手を顔の高さにまで上げた。 すると、その手の周囲の空気中から、刀の様な物体が出現したではないか。 「これはどういうことだ?」 「それはね…」いつの間にか、丸子の横に、黒い服を着た少女が立っていた。 「何者だ!?」 「それは今はどうでもいいこと。 とにかく、今の彼は、かつてほど、鬼の意識共有の影響を受けていない。 その間に、彼に何が起きても、おそらく、あなたも、他の鬼も、感知できないでしょうね」 「どういうことだ?」 そう私が言うと、丸子は、先程の剣を持ち、私に向けた。 たかが人間に、私を討ち倒す力があるとでもいうのだろうか?
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