◆ 編が、家に友人を連れてきているので、邪魔をせぬように、散歩に出ていた。 道往く人の思考の痕跡が見えるのは、私にとっては普通のことであるが、 その思考の痕跡が、いつもの見え方と違うのは、私の能力に異変が起きたのか、 それとも、全ての人の思考に何らかの異変が起こったのか、私には判別がつかない。 個々の人の思考の痕跡が、通常の十倍近く膨れ上がっており、 しかも、人と人がすれ違うたびに、痕跡同士がくっつき合って、混ざり合ったりしている。 思考の痕跡同士がこうやって、接触し合うのは、 テレパス能力者が、その能力を使っている時に現れる現象であり、 編が、他者の思考を読んだりする際にも同様のことが認められる。 だが、こうやって一般人の思考の痕跡が接触するのは極めて稀であり、 こう、頻繁にくっつき合えば、他人同士の思考が入り乱れて、混乱を起こしかねない、危険な状態である。 私は、なるべく、他人とすれ違わない様、細心の注意を払って散歩を続行する。 それにしても、これが、鬼神の影響なのだろうか? 全く、恐ろしいことだ。
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