その日は、日中、外で立っているだけで、目の前が白くとぶ様な気がする、暑い日だった。

夏休み真っ盛りな私は、家に丸子君とユキを呼んで、舞を披露している。

ここ数日、私は、いや、私の知る全ての人が、ある予感に苛まれている。

夢で見たり、幻覚であったり、

その内容は、道往く人が、突然光に包まれて、その光が巨大化して消えるというもの。

私の知る人とは言ったが、おそらくは、私の知らない人でも… 世界中のあらゆる人が同じものを見ている。

鬼神が、行動を起こす日が近い、ということなのだろう。

それを考えていると、舞がどんどん激しくなっていく。

そして、行きすぎないところで、舞を止める。

いくらなんでも、この二人の前で醜態を晒す気にはならない。

「まあ、こんな感じ」

「へえ、きれいだったよ」

「クルクル回ってるだけなんだけどね、ありがと。

 丸子君、どうだった?」

「すげえな…」

この一言だけだが、丸子君には、別の要素が働いたらしく、脳内は、そういう妄想で溢れていた。

とりあえず殴っておく。

「いてえな! 何すんだよ!」

「自分の胸に手を当てて考えておきなさい」

「まったく… どうせ、俺の心読んで、知ってるんだろ? 悪かったよ…」

「まあ、健康な男子らしくてよろしい」

「で、俺達を呼んで、舞を見せてどうすんだ?」

「今の舞を、ちゃんと思い出せる?」

「ああ、まあ、ぶっちゃけ、回るだけだったし。

 細かい動きとかがあったのかどうかはよくわかんねえけど…」

「私が回っている姿は思い出せるんだね?」

二人ともうなずいた。

「鬼神が行動を起こしたとなれば、おそらく、全ての人が鬼と化す。

 そうなると、私や、あなた達も例外ではなく鬼となる。

 鬼となった人は、精神が鬼に飲み込まれるばかりか、

 鬼には個という概念が無いから、近くにいる鬼が同化しあう。

 そうなると、鬼神を討つという目的も消されてしまうかもしれない。

 そこで、鬼になった瞬間から、この舞を思い浮かべてほしいの」

「どういうこった?」

「この舞の中に、鬼神を討つという目的をインプットしてある」

「ちょっと待て… インプットつったって… 細かい動きとかは思い出せないって言ったろ?」

「大丈夫、この舞を見た記憶があれば、舞を思い出しただけで、その目的を引き出せる。

 踊りっていうのは、そういう人の記憶システムに訴える要素があるの」

「何かよくわかんねえけど… 思い出せばいいんだな…?」

「ちゃんと覚えといてね」  

 

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