◆ その日は、日中、外で立っているだけで、目の前が白くとぶ様な気がする、暑い日だった。 夏休み真っ盛りな私は、家に丸子君とユキを呼んで、舞を披露している。 ここ数日、私は、いや、私の知る全ての人が、ある予感に苛まれている。 夢で見たり、幻覚であったり、 その内容は、道往く人が、突然光に包まれて、その光が巨大化して消えるというもの。 私の知る人とは言ったが、おそらくは、私の知らない人でも… 世界中のあらゆる人が同じものを見ている。 鬼神が、行動を起こす日が近い、ということなのだろう。 それを考えていると、舞がどんどん激しくなっていく。 そして、行きすぎないところで、舞を止める。 いくらなんでも、この二人の前で醜態を晒す気にはならない。 「まあ、こんな感じ」 「へえ、きれいだったよ」 「クルクル回ってるだけなんだけどね、ありがと。 丸子君、どうだった?」 「すげえな…」 この一言だけだが、丸子君には、別の要素が働いたらしく、脳内は、そういう妄想で溢れていた。 とりあえず殴っておく。 「いてえな! 何すんだよ!」 「自分の胸に手を当てて考えておきなさい」 「まったく… どうせ、俺の心読んで、知ってるんだろ? 悪かったよ…」 「まあ、健康な男子らしくてよろしい」 「で、俺達を呼んで、舞を見せてどうすんだ?」 「今の舞を、ちゃんと思い出せる?」 「ああ、まあ、ぶっちゃけ、回るだけだったし。 細かい動きとかがあったのかどうかはよくわかんねえけど…」 「私が回っている姿は思い出せるんだね?」 二人ともうなずいた。 「鬼神が行動を起こしたとなれば、おそらく、全ての人が鬼と化す。 そうなると、私や、あなた達も例外ではなく鬼となる。 鬼となった人は、精神が鬼に飲み込まれるばかりか、 鬼には個という概念が無いから、近くにいる鬼が同化しあう。 そうなると、鬼神を討つという目的も消されてしまうかもしれない。 そこで、鬼になった瞬間から、この舞を思い浮かべてほしいの」 「どういうこった?」 「この舞の中に、鬼神を討つという目的をインプットしてある」 「ちょっと待て… インプットつったって… 細かい動きとかは思い出せないって言ったろ?」 「大丈夫、この舞を見た記憶があれば、舞を思い出しただけで、その目的を引き出せる。 踊りっていうのは、そういう人の記憶システムに訴える要素があるの」 「何かよくわかんねえけど… 思い出せばいいんだな…?」 「ちゃんと覚えといてね」
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