◆ 「まだ始めてとは言っていない!」 少女が叫ぶ。だが、クマはそんな言葉に耳を傾けず、丸子君に向かってくる。 そして、丸子君の目の前に来て、平手を打ってきた。 それを咄嗟に丸子君は、前かがみになってかわした。 だが、クマは丸子君を上から押さえつけた。 「ぐ…」 丸子君は、両手を地面につき、クマの押さえ込みに耐えている。 すると、丸子君の両手に、霊力が集中しているのがわかった。 これは、丸子君が…? いや、違う。丸子君を通して、クマが霊力を集中しているのだ。 「あのクマ… 何者…?」 そして、丸子君の両手の間から、何かが伸びてくる。 地面から、タケノコのような、土の色をした何かが。 それは、周囲の草を巻き込み、日本刀ぐらいの長さにまでなった。 丸子君の能力を通して、あのクマの送り込んだ霊力が、あれを創りだした様だ。 「それを取れ」 クマが、喉の奥から絞り出すような声で言った。 丸子君が、その土色の棒を手に取り、持ち上げると、棒を巻き込んでいた草が切れる。 見た目こそ土の塊の様な棒だが、それは確かに切れ味を持った剣である。 「霊力…つまりはイデアを集める要領はつかんだはずだ。 お前は、そこに物体があれば、そこから思い描いたものを生成できる」 「見た目はあんまりよろしくないがな」 「お前は、武器に見た目を求めるのか?」 「いや、切れれば、それでいい」 「切れればいいのか? 相手の攻撃を防げなくとも?」 「へへっ… 刀は、そういう使い方をするもんじゃねえんだろ?」 「そうだな… たたらの者からよく学んだ様だ」 「おかげさまで、死ぬ目にあったぜ」 「お前を死ぬ目に合わせた者、その姿をした私を倒せるかね?」 「やらなきゃなんねえんだろ? だったら、やるまでだよ。 それに、今の要領で武器を創りだせるのなら、この剣が曲がろうが折れようが、 もう、何も関係ねえってこった」 「ならば、その生成の前にお前を殴り殺してやろうか。 それとも、生成される武器ごと殴り殺そうか?」 「やれるもんならやってみやがれ!」 そして、少女は口を開いた。 「二人とも、始めて…!」
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