◆ しばらくすると、遠くから、黒い塊の様なものが近づいてきた。 人ではなさそうだが、歩いている様な動きではある。 だいぶ近づいてくると、それが大きな動物であることがわかった。 クマだ。 「!」丸子君は、驚きの表情を浮かべている。 マオさんのところで、実際にクマと戦ったと聞いたが、 その時のことを思い出したのだろうか? そして、クマは、私達の目の前に来て立ち上がった。 それは、まるで立ちはだかる壁だ。 その巨大さに息を呑むが、丸子君の様子はさらに深刻だ。 「これとやれってのかよ…」 すると、少女は 「クマより強い相手とだって戦うって約束じゃなかった? それとも、今回も、冗談だと思ってたって言うわけ?」 「…わかってる… 今度は、逃げねえよ」 私は思わず丸子君に向かって走り出しそうになった。 その瞬間、少女は私の前に立ちふさがる。 「ここでは、彼の意思が最優先。 あなたは黙って見ていなさい」 「丸子君が… 丸子君が…!」 すると、少女は振り向いて、丸子君に叫んだ。 「どうでもいいけど、いつまで素っ裸で丸腰のつもり? ナメてんの?」 「ちょっと待て! 武器があるんならあるって言えよ!」 「武器なんて持ってないよ」 「何だと!?」 「あなたには、イデアを改変する能力があるはず」 「それって、紙とかをでっぱらせるあれか?」 「そう。その力で武器だって創りだせる」 「そんな大げさなことやったことねえよ!」 そこで私は思わず叫んだ。 「できる! 丸子君なら! 早くしないと!」 次の瞬間、丸子君に向かってクマが走りだした。 「ちょ! まっ…」
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