私達は、激しくもつれ合う。あらゆる体液が、混じり合い、お互いの身体にこびりつき、

生温かさと、光沢を与える。まるで、別の生き物になった私達は、鳴き声を上げながら

のたうちまわり、苦痛と喜びの入り混じった感情の中で、人としての意識を遠のかせていく。

脳は、最早思考装置としての役割を失い、生殖器が全てを支配し始め、

口は、喘ぎ、舐めあうための器官となり、脚は、互いがほどけぬように結び付くための道具となった。

脳が人としての機能を失おうとしていた、その時、私達は光に包まれた。

薄暗い部屋が、真っ白な空間へと変わり、私達は空中へと放り出され、

そのまま飛びながら、交わり合った。

 

気がつくと、空は灰色で、私達は、草原に寝ころんでいた。

肌につく土や、枯れ草を払い落す。丸子君が、私の背中を払ってくれた。

「ここは…どこだ?」

「わからない…」

長めの草が、お腹のあたりをくすぐる。この肉体は、おそらく、精神世界に投影されただけのもの。

だけど、さっきまでの、丸子君の体温は残っている。

丸子君の男性自身の感触も。

「!」

向こうから、何かが来る。どうやら、人の様だ。

近づいてくるそれは、黒ずくめの少女… 以前会った、私に似たあの少女だ。

「宮田… 二人…?」

「私は、以前、あれに会ったことがある…」

そして、少女は、私達の目の前に立った。

「やあ、また会えたね」

「あなた…メズサの本質…?」

「ご名答。そう、私は、メズサそのもの」

「ここは、どこ…?」

「あらゆる英雄の原風景みたいのものかな」

「ということは、メズサの領域…?」

「その通り、メズサは、選ばれし者をここに連れてきて、最後の試練を与えるの」

「選ばれし者…? ということは、英雄は…」

「そう、そこの彼。丸子佐丸、あなたは、メズサ、宮田編に選ばれし者」

「選ばれし者…? 英雄? どういうこった…」

「あなたは、これから、英雄となるための試練を受けることになる。

 その覚悟はあるか? もし、その意思が無いのであれば、立ち去るがよい」

「…なるほど、神だか、鬼神だかと戦わなきゃならないんだよな…

 ならば、英雄にでもならなきゃ、太刀打ちできねえってか…

 仕方ないな、やるよ」

「丸子君…」私は思わず彼の名を呼んだ。

「安心しろよ、俺は死なねえ」

「危なくなったら…逃げて…!」

少女は、笑顔を浮かべながら静かに言った。

「さあ、試練が始まろうとしている。あなたに必要な力を思いうかべて。

 うまくできなければ、生きて帰れないよ」

「やってやるよ、さあ来い!」  

 

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