◆ 「今日、丸子くんの家に泊まりに行っていい?」 突然、宮田がそんなことを聞いてきた。 「な… なんだよ! 突然…!」 「お茶こぼしちゃって、汚いなあ…」 「弁当食べてる時に変な冗談言うな」 「冗談じゃなくて、本気だよ」 「待て、お前、わかってんのか? 男の家に女が…」 「おっしゃりたいことは、私もよくわかっております。そして、私もそのつもりです」 「待て、本気か? 俺達、まだ、高校生だぞ」 「それは重々承知です。 受験勉強やってる? もう三年生なんだよ、私達」 「話をすり替えるな。まだ若い俺達が、そんな…」 「そんな…何?」 「言わせるな! わかってんだろ?」 「セック…」 「言わんでいい!」 「だけど、もう、やっちゃってる人なんて結構いると思うよ」 「そんな奴はロクなもんじゃねえだろ」 「…普段どんな子想像してオナニーしてるの?」 「ぶっ… あー… またお茶が… お前なあ…」 「熟女?」 「なわけねえよ… まあ、そういうのが好きな奴もいるが、俺はそうじゃねえ」 「同い年の高校生アイドルとかは?」 「…たまに…」 「だけど、丸子君の考え方だと、セックスはかなり年取ってから、ってことになっちゃうよ? ほら、今、晩婚化とか進んでるし」 「それとこれとは話が違うだろ!」 「私はそこまで処女守る気は無いなあ。丸子君は童貞捨てたくないの?」 「そこらの男と一緒にすんな」 「まあ、人それぞれだとは思うけどね… だけど、私押し掛けるから、覚悟しといてね。 手出したくないなら出さないでもいいけどね」 「それで間違い起こしたら、俺、最低じゃねえか」 「むしろ、間違い起こさせる気まんまんですが。まんまん」 「まんまん言うな!」 「何想像してんの? いやらしー」 「お前が変なこと言うからだろ! っていうか、何だよ、急に… 何かあったのか?」 「…」 「この前の夢と関係あることなのか?」 「…隠せないかあ… うん、多少関係あるよ」 「お前なあ… 大事なことは先に言えよ」 「…ごめん…だけど…」 「言ってみろよ」 「…ここじゃあ、ちょっとね… あとで… あ、予定とか無いよね? 大丈夫だよね?」 「それ、先に聞けよ… ねえよ、いいよ、帰って即やれるよ」 「うっわ、サイテー」 「うるせえ!」 午後の日差しが、生意気で無邪気な小悪魔を、優しく輝かせていた。
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