◆ その日の学校帰り、繁華街の入り口を通り過ぎようとした時、私を呼びとめる声があった。 「…ユキ? 今日、学校に来なかったみたいだけど…」 私が振り返ると、厳しい顔をしたユキがいた。 「ごめんなさい…あなたに大事な話があるの…」 「…前田がらみ?」 「うん… 来て」 私は、ユキが導くままに、繁華街のとある路地裏へと入って行った。 そして、私の背後に、何者かの気配を感じた。 「前田…久しぶり」 「ああ、頂よ、ずいぶんと、成長したようだな」 振り向くと、前田がいた。手には、チェロ用のハードケースを持っている。 「何それ、演奏家にでもなったの?」 「… これより始める儀式に必要なものだ」 「何? 私にも関係あるの?」 「むしろ、お前が主たることだ」 「どういうこと?」 「お前に、『メズサ』を襲名してもらう」 「『メズサ』!? 何それ?」 「なればわかる」 前田は、ハードケースを地面に置き、それを開いた。
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