その日の学校帰り、繁華街の入り口を通り過ぎようとした時、私を呼びとめる声があった。

「…ユキ? 今日、学校に来なかったみたいだけど…」

私が振り返ると、厳しい顔をしたユキがいた。

「ごめんなさい…あなたに大事な話があるの…」

「…前田がらみ?」

「うん… 来て」

私は、ユキが導くままに、繁華街のとある路地裏へと入って行った。

そして、私の背後に、何者かの気配を感じた。

「前田…久しぶり」

「ああ、頂よ、ずいぶんと、成長したようだな」

振り向くと、前田がいた。手には、チェロ用のハードケースを持っている。

「何それ、演奏家にでもなったの?」

「… これより始める儀式に必要なものだ」

「何? 私にも関係あるの?」

「むしろ、お前が主たることだ」

「どういうこと?」

「お前に、『メズサ』を襲名してもらう」

「『メズサ』!? 何それ?」

「なればわかる」

前田は、ハードケースを地面に置き、それを開いた。  

 

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