◆ その日の朝は、薄曇りで、窓から差し込む光も頼りなげだ。 空席の目立つ教室の一角で、私は自分の席にただ座っているだけだった。 いつぞやの様な、クラス中の妄想が渦巻く事態もあまりなくなった。 あの夢の事は、皆忘れてしまったのだろうか。 まったく、好き勝手に犯してくれて、そして、罪の意識も大して無く、忘れ去るなんて、 無責任すぎて笑えてしまう。まあ、たかが夢とでも思っているんだろう。 まさか、人類が滅びゆく運命だなんて露ほどにも思っていないに違いない。 そんなネガティブな思考に陥って外を見ていると、クラス中が静まり返ったのに気付いた。 思わず視線を前に向けると、教室の入り口に… 「丸子君…」 「よお、わりいな、皆、心配かけちまったみたいで、先生にさっきこっぴどく怒られちまった」 すると、丸子君と仲のいい男子生徒が、丸子君に近寄って頭をはたき合ったりした。 そして、丸子君は、こっちを見て 「よお! 俺がいない間、そんなポツンとしてたのかよ?」 私は、思わず顔を背けてしまった。 すると、丸子君が近寄って来て、 「わりい… 俺がいないと、お前が孤立しちまうなんて… 思ってもいなかったからさ…」 「別に、ひとりには、慣れてるもん」 すると、丸子君が私に顔を近づけてきた。私は思わず、噴き出してしまった。 「よし、お前は、笑ってた方が可愛い」 「ところで、もう、探さないの?」 「負けちまったもんは、しょうがねえし… 気付いたんだよ、俺にとって本当に大事な奴に」 「誰?」 「…言わせるのかよ?」 「んー… 私の知ってる人だったら、また、協力してあげようかなってね」 わざと、視線を外しながら言ってみた。すると、 「とぼけてんなよ?」 「…違ってたら、恥ずかしいもん」 「…わかったよ、言うよ…」 「ここで言うの?」 皆が注目していることに、丸子君が気付くと、 「あ…後で…中庭な…」 「うん、あの木の下ね」 「…」 丸子君は黙って、自分の席に着いた。
■_____2 |
|
ブラウザを閉じてください |