ところで、私は、実は人の心が読める。 とは言っても、相対して、私に関心を持った人じゃないと無理なんだけど。 多分、私が依り代であることの影響だと思う。 で、この人達は、まあ、心を読むまでもなく、私に対してどう思っているかはわかるんだけど、 少なくとも、私が抵抗することなんて全く考えてはいない、ということを確認しておく。よし。 着ていたパーカーを脱ぐと、金髪の人が反応を示したみたい。 次にトレーナーに手をかけると、その人は全く正常な思考ができなくなっていた。 「でも、私みたいなやせっぽっちじゃ、楽しくないんじゃない?」 「へっへっへ…、むしろお前みたいのがいいんじゃねえかよお!」 と、金髪の人が前のめりになった瞬間、私はパーカーをその顔に投げつけ、 間髪入れずに、全体重を乗せた左足で、彼のみぞおちを蹴った 「ガゥァッ」 声にならない声で喘いだのは彼の方。 言い忘れたけど、宮田家には独自の武術が伝わっていて、私も、歩けるか歩けないかくらいの頃から おばあの手ほどきを受けていた。 さて、事態の緊急さを感じた、金髪の人の取り巻き達の顔がひきつった。 その中で一人、一生懸命何かを探してるみたい。ああ、ナイフか。 彼は記憶の整理がついてないみたいで、一生懸命、どこのポケットに入れたか思い出そうとしているけど、 彼の思考を読み取った私はナイフの場所を彼よりも早く、ズボンのポケットにあることを割り出して、 おもむろに取り出させてもらった。 「探し物?」 それを素早く首もとに突きつけたら、その人、飛ぶように後退りした。 …皆、あまりに急な出来事で、何が何だかよくわかってないみたい。 その隙に、私は全力で走った。路地裏を出て、人目にさえつく様になれば、彼らにはどうすることもできない。 路地裏を抜けるまであと少し! だけど何故か、表通りに出られない。 おかしい、そう思って振り返ると、皆、何故か倒れていて、金髪の人だけが立っていた。 彼がこっちに向かってくる。彼の思考を読み取ろうとする。 読めない!彼の思考が読めない! 何者かが乗り移ったの!?
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