◆ 「お帰りの時間が遅くなったようで」 私が門を開けて、ただいまと言うか言わないかのタイミングで 不意打ちを食らってしまった。 おばあは、宮田家の血統でありながら、依り代としての才能には恵まれなかった。 だけど、その分、私たち依り代の身辺の世話や相談に乗ってくれたりとか、 私たちにとっては無くてはならない存在になっている。 もちろん、私も大好き。 だから、そんな人に厳しく言われるのは余計辛いものがある。 だけど 「お客様からのおみやげがございます、早く手を洗ってきなさい。」 やっぱりおばあ、大好き。 「編(あみ)お嬢様、今朝からお顔が優れませんね。」 「…」 「ちえ様のことで?」 …図星、というか、わかって当然か… ここで私が思いの丈でもぶつけていれば、また違った運命を辿ってたかもしれない。 だけど、私はただ一言「うん…」とつぶやくだけで、押し黙ってしまった。 私は、依り代としての重圧を感じ始めていた。 唯一の心の拠り所であるはずのおばあにも何も言えなければ、もう私に逃げ場は無かった。 そして運命の夜…
|
|
ブラウザを閉じてください |