ビルの並ぶ割と大きな地方都市

生温かい潮風が鼻につき始める夜

街の喧騒は多少の異常は消し流す

街の一角のビルの屋上に少女が立っているくらいの異常は。

ビルの屋上から見る景色は輝きに充ち溢れている

星空、ネオン、それらが反射する海面

おおよそ絶望とは無関係に見えるそれはおそらく

それを見る者の心と必ずしも同調するわけではないだろう

だが、それでも少女は笑みを浮かべていた

それは、街の喧騒に更なる薪をくべるつもりにでもなったかの様な

これからこの喧騒の主役になるのは自分なのだと言いたげな。

かくして喧騒の中に鈍い音が混じり、だがその後けたたましい叫び声が次々上がり

やがて、赤い光と凄まじい警報音が街中を駆け巡ることになった

アスファルトの粒の間を流れる赤い血は、ビルの間を縫う赤い光と似ていた

 

 

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