◆ ビルの並ぶ割と大きな地方都市 生温かい潮風が鼻につき始める夜 街の喧騒は多少の異常は消し流す 街の一角のビルの屋上に少女が立っているくらいの異常は。 ビルの屋上から見る景色は輝きに充ち溢れている 星空、ネオン、それらが反射する海面 おおよそ絶望とは無関係に見えるそれはおそらく それを見る者の心と必ずしも同調するわけではないだろう だが、それでも少女は笑みを浮かべていた それは、街の喧騒に更なる薪をくべるつもりにでもなったかの様な これからこの喧騒の主役になるのは自分なのだと言いたげな。 かくして喧騒の中に鈍い音が混じり、だがその後けたたましい叫び声が次々上がり やがて、赤い光と凄まじい警報音が街中を駆け巡ることになった アスファルトの粒の間を流れる赤い血は、ビルの間を縫う赤い光と似ていた
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