五月らしい風が吹き荒れる夜。

この路地裏も、風が吹く度にうめき声をあげていた。

「誰だ?」

気配を隠す気の無い背後の存在に私は声をかけた。

するとそれは姿を現した。

何かのアニメのイベントの客引きのための着ぐるみ姿で、プラカードまで持っている。

「銀? そんなバイトやってたのか」

「いやいや、中の人にちょっと交代してもらっただけだ。

 別に殺しちゃいないさ、見かけない同僚の姿に多少不信感はあったろうが」

「その時も変装してたんだろ?」

「まあな、当然そいつに自分の顔を覚えられては面倒だからな」

「私に会うためにそこまでやるのか?」

「お前に会うためだからさ。同僚と会うのは、自分にとっては本当に面倒くさいことだ」

「まあ、わかるよ。ところで、何の用? 私を殺しに?」

「いやいや、お前、最近、宮田家の娘を見たか?」

「知ってるだろ? 行方不明だって。宮田家の周りをうろちょろしてる私にもさっぱり見当がつかない」

「お前は探さんのか?」

「お前が知らなくて安心した。そっちが知らないってことは、安全ってことだ」

「なるほど、無闇に探して、見つけてしまっては、逆に危険にさらす可能性がある、と」

「そういうこと」

「我々の捜査の妨害をしているのはお前か?」

「違うよ、それは宮田家とか、『あの組織』とか、色んなとこが連携してやってるこった」

「お前はそれには…?」

「私はそこまで信頼されてはいないよ」

「そうか、邪魔したな」

「もう行っちゃうの?」

「現状ではお前は、生きていても死んでいても意味が無い。

 だが、生かしておけば、毒か薬かのどちらかになる。

 それまでは様子を見させてもらうということだ」

「なんにせよ、私はお前らの期待通りになる気は無いよ」

「どういうことだ?」

「さあてね」

「ふん…」そして、銀は路地を出た。

私が路地を出ると、着ぐるみの姿はそこには無かった。

あの夢を多くの人が見た三日後、編は姿を消した。

一体、どこにいるのだろうか… 彼女は今、無事なのだろうか…?  

 

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