帰りの船、乗るのは私だけ。

こうして、また、私の周りから、いなくなる人が一人。

だけど、今度のは違う。強い意志を持ち、自ら、身を隠す。

そして、再び現れる事を誓った。

丸子君のいる島を眺める。靄が強くかかり、徐々に姿が見えなくなっていく。

だが、靄の向こうには確かに島が存在しているのだ。

見えるか見えないか、それだけに拘れば、大事な物を見逃してしまう。

それは、よく知っている。だが、今わかった。

消えてしまった人達が、必ずしもいなくなったわけではない。

強い意志をお互いに持ち続けていれば、きっと再び巡り合えるかもしれない。

…今、誰かが、「そうだ」と言った気がした。

会いたければ、こっちから会いに行く事だってできるのだ。

考えてみれば、大した問題ではないじゃないか。

かつては、流刑地として使われていたというあの島も、今は、自由に行き来できる。

さて、こっちも、丸子君が戻ってくるのに備えて、能岡さんを何としても探さなきゃ。

「…私じゃ駄目なんだよなあ…」

そして、厚い靄により、島は完全に見えなくなった。

春の風は、更に強く吹き始めた。  

 

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