◆ 元日 宮田家では、この日、初詣ではなく、宮田家なりの方法で、神様に謁見する。 つまりあれだ、いつもの儀式だ。 何の用もないのに、神様のとこまで行って、セクハラされてくる。しかもこっちはそんな気分じゃない。 さて、始めましょうか。 元日だからと言って、いつもと特に変わらない儀式。 鳴り物が鳴って、私が舞う。今となっては、特に意識しなくとも、舞の型は崩れない。 いつぞや、見物に来た文化研究家に、舞だけ見せてやったが、 始終、私の身体についての妄想を繰り広げていた。 つまり、客観的に見て、そういう想像を喚起する様な舞なのだろう。ただクルクル回っているだけなのだが。 で、いつもの領域に到達する。 ここんとこ、快楽の渦は、純粋に快感として受け止めている。 何というか、気持ち良く思わなきゃ損だから、とでも言っておこうか。 さて、本日の主賓のお出ましだ。 「やっほ、エロエロ大神、元気にしてた?」 「ああ、そちらも元気そうで何よりだ」 「じゃあ、今日はこの辺で…」 「まあ、待て。せっかくだから、その身体、よく味わわせてくれ」 「せっかくだからお話、じゃなくて?」 「今更何を話す? 姿の見当たらぬ娘の事か?」 「どうせ、あなたは何も教えてはくれないんでしょ?」 「ああ、お前に教えてもどうしようも無い事だからな」 「どうせ、そんなとこでしょ」 「それはそうと、やはり、恋する女体は美しいな」 「な!? 恋!? 私が!?」 「ああ、お前の身体は恋をしている。 恋は、身体を確実に変化させる。 全身の血管は拡張し、肌は薄紅の花弁を想像させる色になり、 汗に微量の香気が混じり、男を惑わす。 生殖器は意識せずとも常に細動を繰り返すようになり、色や肉の厚みが増していく。 そして、全ての物事を前向きに捉えられる様になり、その多くが性的な快感へと変換される。 最近、私が与える快楽を、お前は純粋に快感として捉えられる様になったのではないか?」 「…あんたに図星なこと言われると腹立つ… ああ、そうかもね、私恋してるかも。 もしかしたら、私、そいつのものになっちゃうかもね、あんたそっちのけで、そいつと…」 「それは素晴らしい!」 さすがに私はずっこけた。 「ちょっと! そういうことになったら、つまり… えーと… 私は、処女じゃなくなっちゃうんだよ? そうなったら…」 「私が、巫女に処女性を求めていると?」 「そうなんでしょ?」 「確かに、神の中には、そういう輩も多いな。だが、私は構い無いぞ。 むしろ、肉欲に溺れる女体もまた、至高であり、お前がそうなるのなら、 それは是非とも味わってみたい。 以前の様な幼い身体にも魅力があるが、 女としての肉体に変化していくことで生まれる魅力もある。 赤子から、老婆に至るまで、どれだけ味わっても味わい尽くせぬ、それが女体!」 「えーっと…つまり、お婆さんになるまであんたと付き合えと…」 「その通り!」 「…あー、まったく…わかったわかった… まったく、年の初めからとんでもない約束されちゃったな…」 そして、快楽の渦を再び抜け、目覚めると… 「これも含めて魅力とか言ってんじゃないだろうな…」 「はい? 何でしょう?」 補助の巫女さんが不思議そうに私の顔を見ている。 「あ、何でもないよ! あいつのセクハラトークにちょっとカチンときただけ」 「何だかんだ言って、神様の事好きですよね?」 「ちょっと待って… それはないな… 私が好きなのは…」 「好きな人いるんですか!?」 「あ! いない、いない、そんな奴いない!」 「あやしーなー」 「いない!」 こんなやりとりで年が始まった。 激動の年が
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