◆ 窓から中庭の様子を見ると、能岡さんが、中庭中央に位置する木の下に立っていた。 あの手紙を読んでくれた様だ。 しばらくして、丸子君がやって来た。丸子君が一生懸命話しているが、能岡さんは、何か上の空みたい。 と、思ったら、何か謝っている様子。ああ、これは、断られたか。 だけど、諦めるな。お、取り出して…手渡した。うん、偉い偉い。 そして、丸子君は去って行った。 能岡さんは、しばらく手渡されたプレゼントを見つめている。少し寂しげだ。
…?
何だ? 妙な気配を感じる。能岡さんが背にしている木の上に何かいる? そして、能岡さんが去っていくと、木の上の気配が、一瞬姿を見せ、次の瞬間消えた。 何だ?あれは… 遠くからなのでよく見えなかったが、人の様な、獣の様な…よくわからないものだった。 高二になってからだろうか、能岡さんの周囲で、奇妙な気配を感じることは多々あった。 その正体が、あれだったのだろうか? 胸騒ぎがする。友達であるが故、能力で調べ回る様な真似はよくないと考えていたのは 間違いだったのであろうか? 「はー、やり切ったぜ…!」 後ろから素っ頓狂な声がする。 私は慌てて笑顔を作り、事の経緯を聞く。 「で、どうだった?」 「先約があるって…まさか、彼氏かな…?」 「それを聞かなきゃ… まあ、彼氏の可能性は高いね、でも、諦めちゃ駄目だよ 奪い取れとは言わないけど、自分の方がいいってことはアピールしてかなきゃ!」 「あ、ああ… だけど、彼氏だとして、どんな奴なんだろう…」 「駄目だよ、弱気になっちゃ! とにかく、渡すもの渡せたんなら、大躍進だよ!」 「ああ! まだまだ勝負は終わっちゃいねえぜ!」 「そうだ! それでこそ男だ!」 「よっしゃ、明日からの勝負に備えて、作戦練るぞ! どんな彼氏だってかかってきやがれだ!」 「その意気、その意気!」 そう、明日がまた来る、その時はそう思っていた。 だが、翌日、能岡さんは、学校に来なかった。
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