「何緊張してんのさ?」

不意に横から声を掛けてきたのは、宮田編。

能岡の親友にして、俺が能岡に近づけるきっかけをくれた人物であり、俺も信頼を置く友人だ。

本当に、こいつには感謝をしてもし切れない。

二年になって、能岡と一緒のクラスになっても、話すきっかけがつかめない時に、

こいつが、俺に話しかけてきてくれたので、能岡とも話すようになれたし、

それ以外にも色々、能岡との仲を取り持ってくれた。

「お前のおかげで、ここまでこれたぜ、本当に感謝する」

「気取る相手が間違ってるよ、ていうか、今更逃げたりしないでよ?

 こっちも色々セッティングに苦労したんだから」

「任せとけ」

「ていうか、それ、そのまま渡すつもり?」

「え?」

「ラッピングくらいしてきなさいよ、ガサツ者って思われるよ?

 実際ガサツだし、もう思われてるかもしれないけど、いざっていう時は頼りになるとこ見せとけっての」

「あ、ああ…」

俺が持っている箱は、今日、能岡の誕生日のプレゼントのために買ってきた、髪どめだ。

真鍮の金属部に、緑色の石が、花弁の様に配置されている。

宮田が、いかにも能岡の好みそうなものと言うのでこれを選んだ。

買い物をしている時は楽しかったが、いざ、今になって、足がすくむ。

「そんな強張らないで、正直、ダメモトだよ。

 あの子意外とモテるし、私の知らないとこで彼氏作っててもおかしくないし、

 だけど、そういう、難しい山に挑戦するのが、男を見せるってもんだよ。

 今は駄目でも、次は見てろくらいの気持で、当って砕けてきな」

「…ああ…」

「もし駄目だったら、友達にも戻れないとか思ってる?」

「…正直、今まで、楽しかったし…」

「何、死にに行くみたいなこと言ってんの? 大丈夫! 骨拾うのは任せとけ!」

「俺が死にに行く様なこと言ってんのはお前だろ!」

「まあ、冗談はさて置いても、あの子、結構あっけらかんとしたとこあるし、

 どういう結果になろうと、明日はまた普通に挨拶できるよ!」

「そ…そうか?」

「むしろ、普通に挨拶できない関係にならなければしょうがないでしょ!」

「そ…そうだな…」

「ほら、ラッピング完了、早く行きな! 女の子を待たせちゃ悪いよ!

 今日は寒いし、おしっこがまんしてるかもしれないし!」

「お…おしっ…!?」

「想像するな! イヤらしい!」

「お前が変なこと言うからだろ! ああ、もう、行ってくるぞ!

 骨拾いは任せた!」

「おお! がんばれよ!」  

 

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