編ちゃんは、クラスの中では一番ではないものの、背の低い方で、

特別大きいわけではない私も、「小さくてかわいい子」という印象を持っていた。

だが、人の大きさは、身長に表れるというわけでは無さそうだ。

その光の柱の前に立つ編ちゃんは、「小さくてかわいい」という印象を吹き飛ばすだけの存在感、

何よりも大きな人間である、ということを表している、と私の目には映ったのだ。

ゆらり、ゆらり、と光の柱がゆらめく。

次の瞬間、雷の様な、光のひびとでも言おうか、そうだ、これはひびだ。

空間に無理やり空けた穴、コンクリートに開けた穴からひびが走る様に、空間の穴からひびが走ったのだ。

光の柱が、どんどん大きくなっていく。

光の柱が大きくなる度に、私の中の何かが解放される様な、妙な気分になる。

そして、次の瞬間、柱の中から、巨大な何か、まるで、人間の様な形をした、生き物?

あるいは、これが、神というものなのだろうか? そんな様なものが、姿を現した。

よく見てみれば、頭には、角なのか、髪の毛なのか、よくわからないが、突起物が何本も生えていて、

似たような突起物が、肘や胴体にも見受けられる。

編ちゃんは、そんな光景を目の前にしながらも、一歩も動かない。

むしろ、背筋を堂々と伸ばしている。己の存在を、その光に見せつけるかのように。

「この道を押し広げたのは、お前か」

直接、心の中に響いてくる様な声。もしかしたら、耳で聞いた声ではないかもしれない。

その声に応えたのは、編ちゃんだった。

「いかにも」

「お前は、私が何なのかは知っているのか?」

「…あなたは…鬼」

「ほう、神と区別がつくか。節穴ではないな」

「だけど、鬼ならば、人の精神の内部で眠っているはず」

「その通り、私は鬼だから、例にもれず、精神の内部に存在する」

「ということは、その空間は…」

「その通り、いわゆる、集合的無意識という奴だ。私が存在するのは、『個人の精神』ではない。

『全人類の精神』の中に分散して存在しているのだ」

「それが、こうして、一つの個体として存在しているということは…」

「その通り、全人類とは言わんが、この周囲の人間の精神に存在する『私』がここに掻き集められて、

私が存在している。」

「…あなたが、鬼神…?」

「その通りだ。私が…」

鬼神が、そこまで言うと、突然、クァ助さんが、鬼神めがけて、飛び込んで行った。

だが、鬼神は、クァ助さんを、あっさりはじき返した。

「クソ…鬼神め…我が主を…クソったれ…クソったれ…」

「カラスよ、私は、お前など知らんぞ?」

「我が主は、鬼神の謎を追ったが故に、殺されたのだ!」

「知らん、私は、私を追った者を殺した覚えは無い。だが、私を利用しようとする者はいつの時代にもいる。

大方、そういう輩にお前の主は殺されたのだろう」

「クァ助、さっき偉そうに言ってたあなたが先走らないで。こんな奴に、どうあがいても勝てるわけがない…」

「えらく弱気ではないか、神に愛されし巫女よ」

「何故それを…?」

「私を見てその態度でいられるのだ、そういう者のはずなのだ」

「まあ、どうでもいい…

答えなさい、あなたを利用しようとしているのは、誰?

誰が、この組織を利用して、あなたを呼ぼうとしたの?」

「ここまで来たのなら、私が答えるまでもない。

それに、私も、他の鬼と同様に、姿を持ってこの世界に解放されたいのだ。

下手に情報を与えれば、お前は、そいつらを潰しかねんからな」

「…つまり、あなたと私は敵同士なわけね」

「神のおもちゃと私が相容れるわけがない」

「私を神のおもちゃと呼んだこと、いずれ、後悔することになる…」

「楽しみに待っているよ」

そう言うと、鬼神は、光の奥へと消えていった。

光の柱は消えずに留まり続けている。この光がもう少し大きく開けば、

鬼神は実体を持って、この世界に現れる、ということなのだろうか?  

 

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