輪の中で、一人の少女に目が留まった。 体全体の色素が薄いらしく、日本人離れした白い肌に、薄い栗色の髪、だが、顔立ちは日本人。 その色の白さと、小柄で細い体は、神聖なまでに美しい。 だが、その両手には、痛々しい、火傷の痕がある。 その姿は、見る者に、理由の無い感動を与え、思わず涙がこぼれそうになる。 「この子が…真名ちゃんか…」 俺は、観里から聞いていた、真名ちゃんの容姿の特徴を思い出し、彼女がその人であることを確認した。 だが、見つけたはいいとして、このままここから無理やり連れ出してもいいものであろうか? あんな化け物を用意した連中なのだ。このままタダで連れ帰れるとは思わない方がいいだろう。 それにしても、彼等は、一体何をしているのだ? やはり、確かめるためにも、彼等に何らかの刺激を与えてやった方がいいのだろうか? 「どうすればいいと思う?」木ノ下に聞いてみた。 「おっぱいとかを触ったらどうだろう?」聞いた俺が馬鹿だった。 と、その時 「彼等は、この世界において死んだも同然である」 「誰だ?」俺は声の方を見た。 そこには、例の光の柱が立っているだけで、誰もいない…もしや…? 「どうしたんだ?いきなり」木ノ下が俺の顔を覗きこむ。 「今、誰かが…」 「気のせいじゃないのか? こいつら、さっきから黙ったままだぞ」 「…こいつらじゃない…」 「どういうことだ?」 「そこにいるのは誰だ?」俺は、光に向かって呼びかけた。 「私が誰なのかは、どうでもいいことなのだ」 「どうでもよくねえから聞いている。こいつらを利用して、あんたは一体何を企んでいる?」 「私が利用しているのではない。私を利用するために、彼等の力を欲した連中がいる」 「どういうこった? この組織の連中は、あんたを利用して何を?」 「彼等もまた、利用されているに過ぎない。彼等も、私の事を何も知らないのだ」 「何もわからねえな、あんた、ほんとに、何者なんだ?」 「…それはいずれわかること…」 「まあ、いいや、こいつら、ここから出してもいいのか?」 「自由にすればいい。だが、彼等は、もう二度と目を覚ますことは無いだろう」 「…! 何だと?」 「彼等は、私の存在する世界と、お前達の世界を繋ぐために利用された能力者達。 その力をほぼ使い切る力技をもって、ようやく、ここまで世界を繋いだ。 だが、それはまだ完ぺきではない。 ここから、また更に、体内に残ったわずかな力を絞りきるために、ここにいる者たちは、 意識を、他の者の内部に入り込ませ、わずかな力を掻き出しては、放出しているのだ。 中には、本当に死んでしまった者もいるが、そういう者の中には、死肉に群がる獣のごとく、 総ての意識体が入り込み、残りの力を貪り尽くしていき、完全な抜け殻となる。 そこの白い彼女も、能力自体は高いが、身体が強い方では無く、間もなく死ぬであろう。 弱い体で発揮できる力は少ないから、彼女の体内にはまだ、多くの力が残っており、 他の意識体にとって格好の餌食となるだろう」 俺は、急いで彼女を引き離そうと手を伸ばした。 「やめておけ、彼等に触れたら、お前もまた、世界を繋ぐ装置の一部になってしまう。 それも厭わないと言うのであれば、先程言った通り、自由にすればいい」 「…くそったれ…」 その時、背後で気配を感じた。ここに来て、また敵か?と振り返ると、 「俺は止めたんだぜ、だけど、泣く女には勝てねえよ」 「泣いてない。それより、こんなとこで真名ちゃんを放っておくわけにはいかない」 観里達が来ていた。 「だが、どうやって助ける?」 「見ていて」 と、おもむろに、宮田さんが、光の柱の前に立った。
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