◆ 木ノ下さんが、建物の内部を案内してくれた。とは言え、極秘な部分が多いらしく、 私達が見ることのできるものはほとんど無い。それに、観光に来たわけではないのだ。 というわけで、すぐに、研究棟の入り口に辿り着いた。 「ここから先は、治外法権だ。入ったら生きて帰れる保証はねえぞ」 「上等」文景さんが笑みを浮かべて言う。やはり、戦闘に長けた人だ。あの勘の鋭さも頷ける。 「じゃあ、お嬢さんたちはここで…」と木ノ下さんが言いかけたところで、 「私達も行きます」と能岡さんが強い口調で言った。 「観里、駄目だ」文景さんは当然、能岡さんを心配する。 「だって、この中に、真名ちゃんが…!」 「大丈夫だ、俺が連れてくるから…」そう言って、文景さんが、能岡さんを抱き寄せた。 そして、文景さんと、木ノ下さんは、扉の向こうへ… 横を見ると…「クァ助、あんたは行かないの?」 「俺の本来の役目は、主人たる、たたらの身を護ることだ。 んで、俺の横には、本物のたたらと、にわかたたらがいる」 「確かに、にわかですがね」 「お前らが行くってんなら、俺も行くぜ。 だがよ、お前らは行くべきじゃない。 戦闘経験うんぬんの話じゃない。 ガキが調子に乗って人殺して回る様な、チンケな殺し合いじゃねえ、 本物の戦闘をやりに行くんだ。 多少喧嘩が強いっていう手合いが見ていい様なもんじゃねえ、 マオさん、あんた、覚えた構えは?」 「ツチグモと、ヤマザル…」 さっきまで自信満々な感じだったのが、急にトーンダウンした口調になった。 「まだ二つか、実際使うのは得意な構えだけかも知れんが、 色んな構えを知っているのと知らんのとでは、取りうる戦術に大きな開きが出てくるんだ。 お前は、実戦には程遠いな」 「…ふん、今は勉強中じゃ!」 と、その時、扉の向こうで、爆発音が鳴った。 いよいよ、始まった。 だが、私達にできる事は、ただただ、息をのむ事だけだった。
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