◆ ビルがかなり近くに見える。ついにここまで来た。 「あそこに、真名ちゃんが…?」 たたらの力を最大限に発揮し、霊力を探る。 すると、非常に強力な霊力の壁に阻まれて、その向こうが見えない。 「これは、結界なんてものじゃない…力技の防壁だね」 「これほど強力な霊力を操るとはのう…一人の力ではあるまいな」 「行方不明になったのは皆、イデア能力者だって、東子さんは言ってた…」 「イデア能力…つまり、直接、現実に働きかけるタイプの霊能力…」と能岡さん。 組織に属しているだけあって、詳しいのだろうか? 「こんなところでグダグダ言っててもしょうがない、行こう」 「あ、ちょっと!」文景さんが突然、ビルに向かって歩き出したので、あわてて止めに入るが、 「連れ去られた奴らを返してもらうだけだ、やましい事をしに行くわけじゃないのに、 ためらう必要があるのか?」 「必ずしも、味方ってわけじゃ…」 「俺だって組織の人間だし、本部にも知り合いがいる。 それに、いざとなれば、然るべき対応を取らせてもらうまでだ」 「…」私は返す言葉が見つからなかった。 「あんたの連れは危なっかしい奴だな」 クァ助が能岡さんに言うと、 「そこが困ったところで…」と、ノロケに聞こえるんですけど、能岡さん。 とにかく、私達は、魔城に向けて足を踏み出した。 そこで待ち受けるものが何かも知らず、私達の未来も知らず… 頂としての能力を発揮すれば、世界の因果律はそこで一旦、白紙となり、再び再構築される。 私の幾度かの頂としての能力行使が、世界の形を歪めたのか、それとも、それを含めての決定事項だったのか それは神でもわからない、いや、わかりながら、私達が彷徨うサマを見て楽しんでいるのだろうか? 私は、天を見上げた。重なり合う雲の縁、太陽の光が透けて見える先に、神の目があるのだろうか? 深淵を覗けば、深淵が覗き返すという。神よ、私の目が見えるか? その時ばかりは、神を罵る軽口を叩く気は起きなかった。
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