その顔の真ん中には、大きな目が一つ。 先程、手鏡で見た、たたらの力を発揮した私の顔と酷似していた。 彼女は、本物のたたらである。 「たたら、の人…?」 「ほう、知っておるのか。まあ、霊能者ではあるし、お前自身からもたたらの気配を感じるからの、 知っていてもおかしくはないか」 「たたら…かつて、この国に、製鉄などの技術をもたらした…」文景さんが興味深げに言った。 「この国だけではない、世界にじゃ。 世界中の伝説に登場する巨人、その多くが、高い製鉄、土木技術を持っておる、 その全てが、たたらなのじゃ。 その証拠に、その巨人のほとんどは、一つ目であったり、身体に欠損があったりする。 製鉄や土木工事は危険なため、それを生業とする人間に欠損が生じやすいから、 技術者はその様に描かれる事が多いのだ、という学説がまかり通ってはいるがな」 「まさか、純粋なたたらが生き残っているなんて」 「珍しい事では無いぞ。たたらには、おれの様に、結界術に長けた者が多く、 各地の山林の奥深くで、結界を張って、誰にも悟られない様に暮らしておるのじゃ 中には、たたらの存在を知っている山里もあったりするが、 そこの住人は、部外者にたたらの存在を口外する様な事はしない。 たたらも、たたらで、山奥に籠って暮らすのは不便じゃからな、 かつては、人間との混血が進み、人間と見分けがつかなくなった者を使って、 街に買い出しに行かせていたらしいが、 おれは、ここの街の者とは馴染みじゃから、こうして堂々と出てくるんじゃ。 まあ、おっ父じゃと皆びっくりするから、この、可愛い顔を持って生まれた、このおれが、 出向いているというわけじゃ」 自分で自分を可愛いとか言ってはいるが、確かに可愛いのが腹が立つ。 「そのお面は?」 「ああ、これか、ほれ」とおもむろにお面を被った。 「何か、ミステリアスじゃろ?」 イラッとした。
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