◆ 翌日、教室に入ると、私の前の席が空いているので、真名ちゃんはまだ来ていない事がわかった。 昨日の事もあって、来る時までには心の整理ができているかな、という安心感が少し湧いた。 だが、ホームルームが始まろうとしても、まだ真名ちゃんが来る様子が無い。 能岡さんが、「今日は休みなのかな? 昨日は元気そうだったけど…」と言う。 お休みなら、後でお見舞いにでも行こうかなと思っていたら、先生が来た。 「では、出席を取ります。 阿合」「はい!」「井上」「はい」 … そして、 「御波 … 御波さんは来ていませんか? 遅刻かなあ?」 先生に連絡がきていない、ということは、寝坊でもしたのだろうか? それなら、笑って迎えてあげる事ができるけど… だが、その後も真名ちゃんが来る様子は無い。 昼休みに、私と能岡さんが先生に呼ばれた。 「あなた達は、御波さんと親しいけど、何か変わった様子無かった?」 「昨日、一緒に勉強会やったんですけど…特に変わった様子は…」 「真名ちゃんの家に連絡はしたんですか?」 「…したんだけど…お母様が言うには、今朝いつもどおりに出て行ったと…」 先生の心を読むが、嘘は言っていない。 「まさか…事故か何か…」能岡さんが上ずった声で言う。 「落ち着いて。友達の身に何かあったとして、その時あなた達がしっかりしていなくてどうするの?」 先生の言葉に、思わず背筋が伸びた。 わずかでも、このまま顔を合わせなければ気楽かな、なんて思った自分を恥じた。 「とにかく、今は冷静になって。もし、何事も無ければそれでいいんだから」 私達は、声無く頷いた。
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