◆ 朝、いつもの通学路を歩いて学校へ向かっていると、後ろからポンっと背中を叩かれた 「おっはよー!」 挨拶をしてきたのはユキさんだった。 「あ、おはよう…」 「のんびりしてて能岡さん待たせると悪いよ!」 「…だね」そう言って私は小走りになる ユキさんは駆け足で、あっと言う間に見えなくなった。 「そんな急ぐような時間じゃないのにな… 『焦る者』を探してるあんたが焦ってどうすんの?」 そうやってブツブツ言ってるうちに、能岡さんの姿が見えてきた。 「さっきユキちゃんが通り過ぎながら声掛けてくれたよ」と能岡さんが言った。 いつの間にかあいつは能岡さんとも親しくなっている。 「あいつ、何急いでるんだろうね?」 「さあね、だけど活発な子だよね」 「元気はいいけど細やかさが無けりゃあ…」 「また、そうやってユキちゃんの悪口を言う… 悪くない子だよ?何が気に入らないの?」 「別に…気に入らないわけじゃ… だけど、何て言うか…」 「小学校時代、よくからかわれてたって言ってたよね? ああいう活発な子にからかわれてたんだね、きっと」 「…うん…」 「大丈夫だよ、あの子はそんな子じゃないよ、きっと」 だけど、あいつは、人殺しだよ。 そうやって、取り入って、殺すのがあいつの手口なんだよ… 喉元まで出かかっている言葉…下手をしたら言ってしまいそう… 私はそれを唾と一緒にぐっと飲み込んだ。 そして、私もどこかであいつのことを信じたいと思う様になってしまった… 学園生活はまだまだ始まったばかりで、まだ最初の夏さえ迎えていない。 遠くには厚く黒い雲が見えていた。
4_____■ |
|
ブラウザを閉じてください |