朝、いつもの通学路を歩いて学校へ向かっていると、後ろからポンっと背中を叩かれた

「おっはよー!」

挨拶をしてきたのはユキさんだった。

「あ、おはよう…」

「のんびりしてて能岡さん待たせると悪いよ!」

「…だね」そう言って私は小走りになる

ユキさんは駆け足で、あっと言う間に見えなくなった。

「そんな急ぐような時間じゃないのにな…

『焦る者』を探してるあんたが焦ってどうすんの?」

そうやってブツブツ言ってるうちに、能岡さんの姿が見えてきた。

「さっきユキちゃんが通り過ぎながら声掛けてくれたよ」と能岡さんが言った。

いつの間にかあいつは能岡さんとも親しくなっている。

「あいつ、何急いでるんだろうね?」

「さあね、だけど活発な子だよね」

「元気はいいけど細やかさが無けりゃあ…」

「また、そうやってユキちゃんの悪口を言う… 悪くない子だよ?何が気に入らないの?」

「別に…気に入らないわけじゃ… だけど、何て言うか…」

「小学校時代、よくからかわれてたって言ってたよね?

ああいう活発な子にからかわれてたんだね、きっと」

「…うん…」

「大丈夫だよ、あの子はそんな子じゃないよ、きっと」

だけど、あいつは、人殺しだよ。

そうやって、取り入って、殺すのがあいつの手口なんだよ…

喉元まで出かかっている言葉…下手をしたら言ってしまいそう…

私はそれを唾と一緒にぐっと飲み込んだ。

そして、私もどこかであいつのことを信じたいと思う様になってしまった…

学園生活はまだまだ始まったばかりで、まだ最初の夏さえ迎えていない。

遠くには厚く黒い雲が見えていた。  

 

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